「紅型×陶芸」と「物語がはじまる器」陶芸作家ヨコイマサシさん（南城市）

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初回投稿日：2014.05.28
　最終更新日：2025.05.16

最終更新日：2025.05.16

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画像提供：ヨコイマサシさん

沖縄県南城市（なんじょうし）の海を望む高台に、陶芸作家ヨコイマサシさんの自宅兼アトリエはあります。ヨコイさんが作っているのは、紅型を陶器に彩った器や表札、そして立体的な装飾が施された器。どれも唯一無二の作品です。

作り出したものを直接お客さまへ
工芸×工芸「紅型陶器」
絵本の中のワンシーン「夢シリーズ」
「僕の作品で楽しい生活の力添えができたら」

作り出したものを直接お客さまへ

画像提供：ヨコイマサシさん

愛知県名古屋市出身のヨコイさんは武蔵野美術大学を卒業後、携帯電話やタッチパネルなどのUIデザインに携わり、デザイナーとしてキャリアをスタートさせました。しかしヨコイさんは当時の仕事について「やりがいはあったけど実感がなかった」と振り返ります。自分が関わった商品がどうやって選ばれて、どんな風にお客さんの手に渡るのか。その様子が見えないことに違和感を感じたのだそう。

その後「自分が作り出したものをお客さんに直接手渡しできる仕事をする」という仕事のスタイルだけを決め、学生の頃から好きだった沖縄に移住。そして2004年に那覇市壺屋（つぼや）にある壺屋焼の窯元育陶園で修行をスタート、2008年に独立し南城市に工房兼ショップ「atelier ＋shop COCOCO」を構えました。

工芸×工芸「紅型陶器」

画像提供：ヨコイマサシさん

実は育陶園で修行をはじめる前からヨコイさんにはひとつの構想がありました。それは沖縄の伝統工芸である「紅型」と「陶器」を掛け合わせた作品づくりです。友人で紅型作家の縄トモコさんに紅型制作の工程を見せてもらい、さらには自身でも紅型を習い、陶芸の修行と並行して試行錯誤を続けて技法を確立させていきました。

画像提供：ヨコイマサシさん

「紅型陶器」と名付けたその作品は、紅型の型紙を使い染めの工程と同じ要領で陶の板に模様をつけて表札や器に仕立てたもの。できる限り紅型と陶芸それぞれの工程に変化を加えず、そのままの要素を掛け合わせて作るのがこだわりです。同じ白でも、柄の部分と素地の部分で濃淡の違う土を使うことで、紅型の絵柄の美しさがより深みを帯びてくる。まるで紅型の一種、藍だけで染める藍型（えーがた）のような作品です。

絵本の中のワンシーン「夢シリーズ」

もうひとつヨコイさんの代表的な作品に、家や木、車などの立体的な装飾が施された「夢シリーズ」があります。この作品は絵本の中のワンシーンを切り取り、額縁に入れて飾るような感覚で作っているのだそう。そこからどんな物語を想像するかは作品を手にした人次第。中には作品をたくさん集めて街並みの様にしている人もいるそうで「お客さんが想像するストーリーを聞きながらぼくも楽しんでいるんです」と話します。

画像提供：ヨコイマサシさん

夢シリーズを作りはじめたのは、器にドアを描いたことがきっかけでした。最初のうちは「使いにくかったら売れないだろう」と立体細工はありませんでしたが、何年もかけて少しずつ枷（かせ）が外れ、立体的な造形になっていったのだそう。「少し立体細工をしたら、思いのほかお客様から良い反応があり、じゃあもう少しやってみよう、その繰り返しです」。

「僕の作品で楽しい生活の力添えができたら」

お客さんの反応を大切にしながら作品づくりを進めるのがヨコイさん流。独立して早々に工房兼ショップ「atelier ＋shop COCOCO」を構えたのも、お客さんに直接作品を渡し反応を見たいという思いからでした。一方で、器の使いやすさという部分ではセオリーから少し外れているのがヨコイさんの面白いところ。

画像提供：ヨコイマサシさん

本来、器は日常での使いやすさを考えて作られますが、夢シリーズの器はその繊細さ故に少し使いにくさを感じることも。ましてやヨコイさんは以前、使いやすさを追求するUIデザインをしていた方。それでもあえて”逆振りした”作品を作り続けているのです。

「使いにくさも乗り越えて、興味をひいてもらえるようなものが作れていると僕も楽しいし、お客さんも楽しいと思うんです。僕の作品で楽しい生活の力添えができたらそれでいいんです。」と笑いながら話してくれました。

ヨコイさんの作品は、南城市玉城字當山にある「atelier ＋shop COCOCO」で、実際に手に取って見ることがことができます。紅型陶器や夢シリーズ、日々の生活を豊かにするアイテムを探しに出掛けてくださいね。