がんばる人を応援したい≪池村博隆≫

がんばる人を応援したい≪池村博隆≫

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歴史文化

放送日:2026.01.26 ~2026.01.30

初回投稿日:2026.02.04
 最終更新日:2026.02.04

最終更新日:2026.02.04

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那覇市小禄の沖縄産業支援センター内にある「沖縄県よろず支援拠点(以下よろず支援拠点)」をご存知ですか?

ここは、国の中小企業庁が全国に設置している無料の経営相談窓口です。中小企業や小規模事業者、これから起業を目指す人まで、事業や経営に関するあらゆる悩みの相談に対応しています。
よろず支援拠点には、商品開発やマーケティング、経営改善、資金繰りなど、幅広い分野の相談に応じる約30人の専門家が在籍し、完全予約制、無料で相談者一人ひとりに寄り添った支援を行っています。

 

沖縄産業支援センターにあるよろず支援拠点
沖縄産業支援センター4Fにあります

人を未来へつなぐ

沖縄には、さまざまな会社やものづくりに励む人たちがいます。その背後には、表に名前が出ることは少なくとも、確実に地域の産業と人の可能性を支えている専門家たちの存在があります。池村博隆さんも、その一人です。

長年、沖縄物産の販売に携わってきた経験を活かし、「出口からものづくりを考える」という視点で、商品開発や販路開拓を支援。漁業、農業、食品加工、伝統工芸、福祉、さらには県外展開まで、池村さんの仕事は分野を越えて、「人」と「商品」と「次の舞台」を結びつけています。

よろず支援拠点の池村博隆さん
よろず支援拠点で出迎えてくれた池村博隆さん

迷いの20代と、30歳の転機

池村さんは那覇市首里のご出身。大学進学で東京へ渡り、卒業後に沖縄へ戻ると、20代は職を転々とする日々を過ごします。30歳までに経験した職は八つ。公務員、水商売、テニスコーチ、広告代理店、保育園の立ち上げ、コンピューター関連企業など、多彩なキャリアを重ねました。

転機は30歳のとき。「これから沖縄は観光の時代になる」。そう直感した池村さんは、サービス業を学ぶため再び東京へ。大手リゾート開発会社が運営するホテルに就職します。

「沖縄に戻ったとき、即戦力になる経験を積みたい」とフロント業務を希望しましたが、配属されたのはゴルフ場のキャディ職。しかしそこで、サービスの本質を体で学ぶことになります。

客の技量を瞬時に見極め、プレースタイルや癖を読み取りながら18ホールを導く。「今日は楽しかった」と言われた瞬間に、接客の本質を実感しました。

本格的に沖縄物産の世界へ

帰沖後は沖縄県物産振興会へ入社。物産展の運営を通じて、沖縄の特産品を「売る」、「伝える」、「流通させる」仕事に本格的に関わり始めます。

数年後には沖縄県物産公社の創設に参加。「銀座わしたショップ」に配属され、伊勢丹新宿など百貨店で沖縄物産展の企画・運営を担当。東京で過ごした6年間は、販路・市場開拓の貴重な実践の場となりました。

その後、沖縄物産企業連合に入社、神戸市役所から阪神・淡路大震災後の神戸・新長田の再開発に協力してほしいとの声がかかり、沖縄物産店「琉球ワールド 沖縄宝島」を立ち上げ、大型店舗の館長を務めました。復興途上で厳しい環境のなか、3〜4年にわたり店舗運営を支え続けました。

50歳で再出発、沖縄県商工会連合会へ

その後、沖縄県商工会連合会へ。物産分野での経験が評価され、「沖縄の産業まつり・ありんくりん市」などを担当。現在はよろず支援拠点の専門家として、「何でも相談できる窓口」を担い、また中小機構では支援業務や商談会の企画・運営にも関わっています。

現在、池村さんのもとには、多種多様な相談が寄せられます。
創業準備や集客・販促・SNSの活用、補助金・融資計画、コロナ融資返済の悩み、財務・法務・税務の専門家との橋渡しなど。

「僕は、話を整理して次の一歩につなげる役割なんです」と池村さん。

もう一つの柱が、農林水産分野の6次産業化スタートアップ支援事業。農家や漁業者の「こんな商品を作りたい」という想いを受け、加工方法、設備、商品設計、販路戦略まで伴走します。

キクラゲ農家「旭イノベーション」の仲眞秀哉さん

キクラゲ農家「旭イノベーション」の仲眞秀哉さん。「キクラゲを身近に感じてもらうために、まずは事業と地域をつなぐ動きを意識するよう、池村さんにアドバイスしてもらいました」


宮古島でカツオ関連の商品を開発する浜口水産の濱口美由紀さん
宮古島でカツオ関連の商品を開発する浜口水産の濱口美由紀さん。「いろいろな悩みを池村さんにぶつけると、どんな質問にも応えてくれる心強い味方です」

「おもしろい」から始まる伝統の継承

池村さんが今「おもしろい!」と感じているアーティスト「前田貝揃案」の前田比呂也さん、彬さん親子を訪ねました。

100円ショップのジョウロに漆を塗り、螺鈿で目の輝きを表現したオブジェ

100円ショップのジョウロに漆を塗り、螺鈿で目の輝きを表現したオブジェには「象が踏んでも壊れない自分」というメッセージを込めています。

 

前田親子のものづくりの根底には、漆や螺鈿を「装飾」ではなく、「価値を更新する素材」として捉える明確な思想があります。

息子の彬さんが「漆は塗料」と語るその姿勢には、素材の実用性や可能性を冷静かつ現実的に捉えています。

螺鈿も「柄や飾りではなく、素材そのものが主役になりうる存在」として捉え直し、貝の輝きを模様として従属させるのではなく、素材の物語や存在感を前面に押し出す表現へと昇華しています。こうした価値観は、息子世代の表現へと受け継がれながら、新しいかたちへと拡張されています。

彬さんは工芸の漆という枠を越え、他ジャンルのアーティストたちとのコラボなどを通して、共感のネットワークを育てるという視点からも漆というツールを未来へ繋いでいます。

父・比呂也さんは「作品そのものの新しさだけではなく、コミュニティをつくること自体が新しい価値」と彬さんの活動を応援しています。

漆は一度塗ると乾かす時間が必要なので、一つの作品を生み出すまでには時間がかかります
漆は一度塗ると乾かす時間が必要なので、一つの作品を生み出すまでには時間がかかります。それが漆を仕事にするということなのです

テーブルを囲む男性
父比呂也さんは、「彼は、作品だけでなく人と人のつながりをつくっているのがすごいなと感じます」

池村さんは、前田親子の作品や活動を通して、「工芸とは何か、作品とは何か」という問いそのものがしなやかに更新されていると感じています。

「ただ、本当におもしろいと思っているだけなんですけどね」

池村さんは新聞『沖縄タイムス』で、県内企業が手がける商品開発のエピソードや思いを深掘りし、その可能性を読者へ伝える企画「ヒットのたまご」を連載しており、前田親子や浜口水産、旭イノベーションを紹介しました。

新聞『沖縄タイムス』で、県内企業が手がける商品開発のエピソードや思いを深掘りし、その可能性を読者へ伝える企画「ヒットのたまご」を連載
2013年にスタートしたヒットのたまごの連載は300回を超えました

「支援」は一人ではなく、仲間とともに

野口正幸さん(左)と上地哲さんとの付き合いはもう30年以上になります
野口正幸さん(左)と上地哲さんとの付き合いはもう30年以上になります

 

現在よろず支援拠点で活動している専門家の中で、池村さんが同志と呼ぶ人たちがいます。

池村さんと同じく、わしたショップ立ち上げに携わり店長を務めた上地哲さんと、百貨店で沖縄物産展を担当し、その後は沖縄に移住して、専門家となった野口正幸さんです。

沖縄物産に光を当ててきた三人が集い、挑戦する人の伴走者として支えています。

池村さんの歩みは、決して一直線ではありませんでしたが、多様な現場で培った経験が、いま相談者への実践的な支援に生きています。

よろず支援拠点を通じて、「ひとりで抱え込まなくていい社会」をつくる。それが、池村さんの願いです。

 

沖縄県よろず支援拠点

https://yorozu-okinawa.go.jp/

中小機構沖縄事務所

https://www.smrj.go.jp/regional_hq/okinawa/index.html

沖縄CLIP編集部

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