時代にあった黒糖のおいしさを求めて《共栄社》

時代にあった黒糖のおいしさを求めて《共栄社》

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歴史文化

放送日:2025.11.03 ~2025.11.07

初回投稿日:2025.11.11
 最終更新日:2025.11.11

最終更新日:2025.11.11

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沖縄本島から離島まで、どこまでも続くサトウキビ畑と青い空は沖縄を象徴する原風景です。
黒糖や砂糖の原料となるサトウキビは、沖縄の基幹産業として人々の暮らしを支えてきました。

戦前の沖縄には、サトウキビを加工する製糖工場が3400カ所以上ありましたが、戦後は多くの工場が被災し、約440カ所にまで減少しました。

さらに戦時中、食料増産のためにサトウキビ畑はイモ畑へと転換され、戦後はアメリカ軍政府によってイモの植え付けが強制されました。

1960年代に入ると、沖縄本島には大型の製糖工場が誕生。各地のサーターヤー(黒糖工場)は次々と吸収されます。やんばる地域にも大規模製糖工場が設立され、今帰仁のサーターヤーは統合されていきました。

そんな中、「このままでは今帰仁の黒糖文化が途絶えてしまう」と、1974年、有志たちが立ち上がります。彼らが今帰仁村謝名に立ち上げた黒糖工場が、共栄社の始まりでした。

共栄社の黒糖工場
早朝から、黒糖を煮詰める甘い香りが漂います

サトウキビ畑
サトウキビは沖縄の原風景

地域とともにある黒糖を守りたい

現在、共栄社の代表を務める與那勝治(よな・かつじ)さんが語ります。

「昔は地域ごとに黒糖屋があり、周辺には黒糖を煮詰める香りが漂っていました。しかし、時代とともに、白糖向け原料の確保が優先され、小さな黒糖工場はどんどんなくなっていったんです。共栄社は、地域の特徴がある、伝統文化としての黒糖を残そうという思いで始まりました」

黒糖は単なる甘味料ではなく、土地の歴史と暮らしに根ざした文化そのもの。共栄社は、そんな黒糖文化を守り続ける数少ない存在です。

 

共栄社の代表を務める與那勝治さん
共栄社の代表を務める與那勝治さん

黒糖と加工黒糖の違い

黒糖商品のパッケージ裏の名称欄に「黒糖」と「加工黒糖」があることをご存知ですか?

⚫️黒糖:サトウキビのしぼり汁をそのまま煮詰めて固めたもの

⚫️加工黒糖:黒糖・粗糖・糖蜜を原料としたもの

どちらもサトウキビを使用した無添加の食品です。

共栄社で製造しているのは加工黒糖です。3つの原料を独自の比率でブレンドし、後味の軽やかな甘さと黒糖特有のコク、香ばしさを活かした多彩な黒糖を生み出しています。

勝治さんは言います。

「加工という名前は付いていますが、うちの原料はすべて県産サトウキビ100%。黒糖よりも風味や味わいの幅が広いので、好みに合わせて選んでほしいですね」


サトウキビのしぼり汁をそのまま煮詰めて固めた黒糖
サトウキビのしぼり汁をそのまま煮詰めて固めた黒糖

サトウキビのしぼり汁を煮詰めて結晶化させた粗糖
サトウキビのしぼり汁を煮詰めて結晶化させた粗糖

砂糖の結晶を分離した後に残る褐色の糖蜜
砂糖の結晶を分離した後に残る褐色の糖蜜

香ばしさを生む直火製法

共栄社の黒糖づくりには、工程の一つひとつに工夫が凝らされています。
3種類の原料を独自の割合でブレンドし、味と口どけを整えた後、ろ過して直火加熱で煮詰めます。この直火製法こそが、共栄社の黒糖特有の香ばしさを生み出す秘訣です。

煮詰めた後は撹拌・冷却で空気を含ませ、やわらかな食感に仕上げます。さらに、ショウガやシークヮーサーなどの副原料を加えることで、味のバリエーションも広がります。加工工程の微調整だけでも、食感や口溶けがまったく異なる黒糖が生まれます。

 

黒糖を直火加熱で煮詰めています
黒糖を直火加熱で煮詰めています

地釜を使って、黒糖作りはすべて手作業で行っています
地釜を使って、黒糖作りはすべて手作業で行っています

有志らと共栄社を立ち上げて、その後引き継いだ現会長の與那森男さん
有志らと共栄社を立ち上げて、その後引き継いだ現会長の與那森男さん。「今ではお茶菓子として一般的になっている黒糖も昔は高級品で、病気の時などに、滋養強壮のために食べる特別な砂糖でした」


今帰仁黒糖
マグロのトロのような口溶けを追求した「今帰仁黒糖」

「今帰仁黒糖」のパッケージ
上記写真「今帰仁黒糖」のパッケージ

黒糖のおいしさを伝える拠点

これまで製造と卸し販売を中心にしてきた共栄社が、黒糖の魅力を直接伝える場として2024年にオープンしたのが「黒糖stand」です。

店頭に立つのは、勝治さんの奥様・尚子さん。「沖縄ではおなじみの氷ぜんざいをメインにしたお店です。金時豆を黒糖でじっくり煮て、その上にふわふわの氷をのせ、黒蜜をたっぷりとかけた黒糖づくしのぜんざい。うちの黒糖は、すっきりとした甘さと深いコクが特徴で、スイーツにもドリンクにもよく合います。家では粉末黒糖をトンカツの下味や餃子のタネにも使っています。黒糖が、ほんのりとした甘みと絶妙なコクを出してくれるんですよ」

 

今帰仁村仲宗根にある黒糖stand
今帰仁村仲宗根にある黒糖stand

 

黒糖standは地域の人たちや子ども達の憩いの場にもなっているようです
笑顔が素敵な尚子さん。黒糖standは地域の人たちや子ども達の憩いの場にもなっているようです


黒糖でじっくり煮詰められた金時豆は味が深くておいしい
黒糖でじっくり煮詰められた金時豆は味が深くておいしい

地域の文化として黒糖を繋いでいく

勝治さんは言います。

「黒糖文化を継承することは、ただ製造を続けることではありません」

今では、共栄社の黒糖は近隣の学童保育のおやつにもなっています。ウチナーンチュにとって黒糖は、疲れた時に口に含み、温かいお茶で溶かして飲む、そんな子どもの頃の思い出の味。

そのやさしい甘さとともにある時間ごと、次の世代へつなげていきたい。

共栄社の黒糖は、伝統を未来へつなぐ架け橋となっているのです。

共栄社

住所 /
沖縄県国頭郡今帰仁村謝名227−1
TEL /
0980-56-2812
営業時間 /
8時〜17時
定休日 /
土・日曜日
Instagram /
https://www.instagram.com/nakijinkokutoukyoueisya/

沖縄CLIP編集部

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