「まあるい輪を結ぶ、町の小さな映画館」《シアタードーナツ》

「まあるい輪を結ぶ、町の小さな映画館」《シアタードーナツ》

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歴史文化

放送日:2025.10.20 ~2025.10.24

初回投稿日:2025.10.28
 最終更新日:2025.10.28

最終更新日:2025.10.28

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シアタードーナツとは

沖縄本島の中でも特に人種や文化が多様で、異国情緒に溢れる沖縄市コザ。

この町に、10年間営まれる映画館「シアタードーナツ」はあります。

胡屋バス停前に佇む木製の扉を開けば、ショーケースには色とりどりのドーナツが並び、アットホームな空間が広がります。ここはカフェ利用も可能なミニシアター。

シアタードーナツのショーケースに並ぶドーナツは全てキッチンで手作りされています

ショーケースに並ぶドーナツは全てキッチンで手作りされています

 

「かつて胡屋バス停前にはドーナツ屋さんがあったので、この町の人には懐かしいだろうし、なんといっても名前の響きが可愛いくてシアタードーナツに決めました」

そう言って笑うのは、創立者の宮島真一さん。

宮島さんはシアター経営者として勉める傍ら、コザのラジオパーソナリティやタレントとしてもご活躍です。

 

シアター経営者の創立者の宮島真一さん

「お帰りなさい」と常連客に微笑みかける宮島さん

 

「銭湯の番頭さんのイメージで、日々皆さんを出迎えています」と話す宮島さんは、来訪の方々と積極的に会話をされます。

映画鑑賞はもちろん、ドーナツを買いに来る人、バス待ちの間に立ち寄る人、宮島さんとゆんたくに来る人、老若男女理由もさまざま。

映画上映前と後には自らスクリーンの前に立ち、解説を加えたり思いを伝える事も欠かしません。

地域に交流や学びが生まれる公民館のような場所でありたいと願う、宮島さんの思いが詰まったシアターなのです。

 

上映前後に登壇し、鑑賞者に語りかける宮島さん

上映前後に登壇し、鑑賞者に語りかける宮島さん

上映作品と取り組み

映画を通し人生や豊かさについて考えるきっかけを提供できたら、と話す宮島さん。

世相や社会的な関心を踏まえて映画を選出しますが、特に思い入れの深い作品は「沖縄県民全員が観るまでやめない」と、繰り返しアンコール上映されます。


建築家夫婦の豊かな老後を描いた「人生フルーツは」8年間で2千回以上も上映されました
 

建築家夫婦の豊かな老後を描いた「人生フルーツは」8年間で2千回以上も上映されました


沖縄の貧困問題を描いた「遠いところ」
沖縄の貧困問題を描いた「遠いところ」も異例のロングランを続けています

 

人生や豊かさを振り返るため、月に一度の映画鑑賞を推奨する宮島さんは、「U22応援チケット」という取り組みを始められました。

これは生活の不安定が続いたコロナ禍において、若者たちが大人のカンパで映画を無料で観られる循環型の取り組み。

新聞に掲載されたり、県外のシアターに波及するなど反響も大きく、思いやりを繋げる装置として現在も継続されています。(取材時点での利用総数は約2千枚)


利用された応援チケットには鑑賞者の感想が書き込まれ、提供者や製作者に還元されます
利用された応援チケットには鑑賞者の感想が書き込まれ、提供者や製作者に還元されます。映画をつくる人、観る人両方の人生を応援したいという宮島さんの思いが具現化された取り組みです。

宮島さんの人物像

沖縄市に生まれ育った宮島さんは、若かりし学生時代から、音楽や映画を身近に育ってきました。

コザの町を映画祭で盛り上げようと持ち上がった会議を発端に、ならば上映する空間も作ってしまおうと生まれたのがシアタードーナツ。
 

2015年春、胡屋バス停前に完成したシアタードーナツ

2015年春、胡屋バス停前に完成

創業当初はアート寄りな作品を中心に扱っていたものの、年々「誰をどのように豊かにするのか」と、地域や近いコミュニティに目が向くようになり、沖縄や社会を描く作品を意識的に選ぶようになったそうです。

現在は、奥様やスタッフと共にシアターを営む傍らで、地域のラジオDJや番組MC、大学のゲスト講師、沖縄市の観光大使、コザの街歩きガイドなど、その経験やキャラクターを活かした地域貢献をされています。


個性豊かな店が軒を連ねるコザのパークアベニューを案内する宮島さん
個性豊かな店が軒を連ねるコザのパークアベニューを案内する宮島さん

変わりゆく町と、シアターの未来

コザの地区開発・整備に伴い、シアタードーナツも取り壊しの計画が立ち上がっています。

コロナ禍で一旦工事が見送られていたものの、いよいよ再開されるとのこと。

シアターからもほど近い、コザの古き良きアーケード街

シアターからもほど近い、コザの古き良きアーケード街

 

「色んな人が行き交うバス停前で10年映画館をやらせてもらって、みんなの生活の一部になったなあという実感は誇りです。

あとは惜しまれ閉店待ちだね。やめないでっていっぱい言われたい!」と冗談めかす宮島さん。

シアタードーナツ創立者の宮島真一さん

「物件をまた探すのか、ゼロから作るのか、具体的なことは分からないけどこの町には僕が助けて!と言えば肩を貸してくれる沢山の仲間もできました。どんな形であれ、続けていきますよ」と。

その穏やかで光に満ちた瞳には、E.T.からこの世界に没頭し続けた映画少年の面影が映るのでした。

シアタードーナツ・オキナワ

住所 /
沖縄県沖縄市中央1-3-17
TEL /
070-5401-1072
開館時間 /
10:30~最終上映終了まで
休館日 /
年中無休 ※年末年始を除く
Webサイト /
https://theater-donut.com
Instagram /
https://www.instagram.com/theater_donut_okinawa/

沖縄CLIP編集部

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