ゆいまーるで、子供の笑顔をつなぐ《タコライスラバーズ》

ゆいまーるで、子供の笑顔をつなぐ《タコライスラバーズ》

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歴史文化

放送日:2025.07.28 ~2025.08.01

初回投稿日:2025.08.05
 最終更新日:2025.08.05

最終更新日:2025.08.05

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沖縄県内の飲食店で展開している「タコライスラバーズ」という活動を知っていますか?

タコライスラバーズは、「みらいチケット」というチケットを受け取った子供たちが無料で食事を得るシステムで、現在、沖縄県内の213店舗で導入されています。


泉崎にある地域食堂「三食堂」
泉崎にある地域食堂「三食堂」

県内の子育てを食でサポートしたい

タコライスラバーズ代表の山川宗徳さん

タコライスラバーズ代表の山川宗徳さん

 

タコライスラバーズの代表として泉崎で学童や地域食堂「三食堂」を主宰する山川宗徳さんは、本島北部・金武町の出身です。

山川さんが子供の頃、地域のお店で買い物をすると、店の人たちがお金の価値以上のサービスをしてくれた記憶があります。

ある時、テレビで奈良県の「げんきカレー」の取り組みを知りました。それは、お客が子供の食事代を先払いでチケット購入し、そのチケットと引き換えに子供たちが無償で食事できる仕組みでした。

「これは沖縄に必要なシステムだ。ゆいまーる精神に溢れた沖縄なら、もっと幅広い展開ができるはず!」そう直感した山川さん。

金武町のソウルフード「タコライス」で子供たちを笑顔にしたい、その思いをSNSで発信し、タコライスラバーズによるみらいチケット普及活動をスタートしました。


金武町は、アメリカ統治下の名残が色濃く残る街
みらいチケットがスタートした米軍基地のある金武町は、アメリカ統治下の名残が色濃く残る街

タコライスラバーズは子育て支援

山川さんと共に立ち上げに関わった発起人の一人が、金武町観光協会職員の安次富逸子(通称いつこ)さんです。いつこさんは観光協会職員として働きながら、タコライスラバーズの理事として広報窓口を担当しています。

いつこさんのような地域に根ざした人々の協力があったからこそ、タコライスラバーズは沖縄全体へと浸透していきました。

タコライスラバーズの仕組みはシンプルです。協力店でお客さんが1枚300円程度の「みらいチケット」を購入し、そのチケットで子供たちはタコライス(店舗によっては別メニューの場合も)を無料で食べることができます。

奈良県のげんきカレーとの大きな違いは、げんきカレーが食堂単体での取り組みだったのに対し、タコライスラバーズは複数の店舗が協力店となっている点です。

この仕組みは、飲食店に子供食堂の機能を持たせることで協力店舗の負担を大幅にカットし、かつ広いエリアでの支援を可能にします。沖縄で213店舗に広がったのは、まさにゆいまーる精神の表れと評価され、2024年のグッドデザイン賞を受賞しました。

 

自称「金武町PR大使」としても活動する安次富逸子さん
自称「金武町PR大使」としても活動する安次富逸子さん。「タコライスラバーズは、困っている子、困っていない子も関係なく、大人がみんなで子供たちを育てる、子育て支援なんです」

 

スタート時から協力店となった金武町の「リカモカカフェ」は、山川さんのお兄さんが営むカフェ。
スタート時から協力店となった金武町の「リカモカカフェ」は、山川さんのお兄さんが営むカフェ。近隣の米軍人たちもみらいチケットを購入するそうです

 

リカモカカフェのタコライス
リカモカカフェのタコライス

那覇市の「タコスプーン」
那覇市の「タコスプーン」では、みらいチケットで食事をした子供たちが、テーブル周りやお店の前で自発的に掃除をする姿もあるそうです

タコスプーンのタコライス
タコスプーンのタコライス

みらいチケットが不足気味のタコスプーンでは、自家製サーターアンダギーの売り上げをタコライスの材料費に充てています
みらいチケットが不足気味のタコスプーンでは、自家製サーターアンダギーの売り上げをタコライスの材料費に充てています

沖縄のゆいまーる精神を信じて

2020年のコロナ禍、金武町を中心に32店舗からスタートしたタコライスラバーズは、沖縄県全体に広がっていきました。

特に地域に根ざした企業、「タウンプラザかねひで(以下かねひで)」の参加は、消費者の信頼度を大幅に向上させました。

「かねひでさまが参加してくださったことにより、小規模飲食店オーナーさまだけでは到達できなかった信頼度の向上が実現し、大きな転機となったと思います」とタコライスラバーズ事務局の本仮屋まさみさんは話します。


かねひでの全店舗でタコライスラバーズが導入されています

かねひでの全店舗でタコライスラバーズが導入されています

 

惣菜コーナーで、こうしたメッセージを目にすることができます
惣菜コーナーで、こうしたメッセージを目にすることができます

県の事業として採用

タコライスラバーズの活動は、2025年6月より、沖縄県から「みらいチケット協力店普及促進事業」として採用されました。

「子供が真ん中」というキャッチフレーズのもと、子供たちが安心して食事ができる場として、現在の協力店213店舗から新たに168店舗の拡充を目指して動き出しています。

県の事業として認められたことで、新規参加協力店舗への導入支援が提供されることになりました。

タコライスラバーズの拠点三食堂

タコライスラバーズの拠点となるのが泉崎の三食堂です。ここは2023年9月に「子供たちの可能性を広げる環境を作る」という企業理念のもとにオープンしました。

三食堂は「みらいチケット」協力店として、地域に根ざした交流の場を提供しています。ランチタイムには、タコライス、カレー、牛丼の3種類のメニューを、それぞれ500円で提供。地域の人々が気軽に集える、温かな食堂です。

料理を担当するのは、事務局の本仮屋さんです。
午後2時半を過ぎると、下校した子供たちが宿題をしたり、おやつを食べてくつろいだり、学童に通う子と、通っていない子が交流する場としても機能しています。

店名の三食堂は、子供たちのインスピレーションから生まれたもの。太陽の「SUN」、朝・昼・晩の三食、実際に提供されている三種類の料理、これらが偶然にも重なり、ぴったりのネーミングとなりました。

 

 

タコライスラバーズを始めて5年。協力店からは、心温まるエピソードが数多く寄せられていると、山川さんは話します。

「かつて、みらいチケットで食事をしていた子が大学生になり、今度は自分のアルバイト代でチケットを買いに来た話、食に困っていない子がお腹を空かせた子を協力店に紹介することもありました。みらいチケットに助けられていた子が、そのお店でアルバイトを始めた話も聞きました。

こうした循環こそ、みらいチケットが単なるツールではなく、“ゆいまーる”の精神として受け継がれている証だと思います」

事務局の本仮屋まさみさん
事務局の本仮屋まさみさん

みらいチケットが目指すのは子供たちの今を笑顔にすること

本仮屋さんは語ります。

 「私たちは子供のお腹を満たすだけでなく、心も豊かにしていきたいのです」

三食堂では、沖縄のエンターテインメント業界で活躍する著名人たちが、ボランティアとして参加。沖縄の方言を伝える授業や、アーティストによる音楽制作を通じた交流など、「チャレンジ塾」と名付けた創造的活動を展開しています。こうしたワークショップによる教育コンテンツはSNSで発信され、三食堂は情報発信の場としても機能しています。

システム拡大により、これまでタコライスラバーズが届かなかった地域にも新たな子供たちの居場所が生まれつつあります。

現在は「各小学校区に最低2店舗の確保」を目標に、着実な活動が続けられています。

みらいチケットは「未来」という言葉を冠していますが、実際には未来へのビジョンに向かって今を充実させることを目指しています。子供たちの現在の笑顔と将来の可能性、その両方を育んでいるのです。

15歳(当時)のイラストレーター「ミラクルくん」が描いたタコライスラバーズのキャラクター

15歳(当時)のイラストレーター「ミラクルくん」が描いたタコライスラバーズのキャラクター

 

タコライスラバーズ

https://tacoricelovers.com/

三食堂

住所 /
沖縄県那覇市泉崎1-3-14
TEL /
080-9445-6778

沖縄CLIP編集部

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