動物たちの幸せのために。進化する沖縄の動物園《沖縄こどもの国》

動物たちの幸せのために。進化する沖縄の動物園《沖縄こどもの国》

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あそぶ

放送日:2024.12.23 ~2024.12.27

初回投稿日:2025.01.07
 最終更新日:2025.01.07

最終更新日:2025.01.07

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琉球歴文化体験モニタープログラム

動物園が果たす4つの役割

沖縄市胡屋にある「沖縄こどもの国」。広大な敷地の半分を占めるアニマルゾーン(動物園)では、約150種、約1000頭の動物たちが暮らしています。沖縄の本土復帰記念事業の一環として1970年に開園した、沖縄県民にも馴染みの深い動物園ですが、時代の流れと共に、そのあり方も変わってきました。

 

「日本の動物園自体が、少し“見せもの小屋”的な発想から始まった流れがあって、これまではたくさんの動物をずらっと並べて見せる動物園が多かったのですが、そのやり方では動物たちの生態や能力をきちんと見ていただくことができません。また、動物たちにとってもストレスが溜まるということで、少しずつ飼育や展示の方法が変わってきています」と話すのは、公益財団法人沖縄こどもの国の金尾由恵さん。

 

動物園には4つの社会的な役割があると、金尾さんは話します。

「まず、レクリエーションとして楽しんでいただくこと。“わ〜動物がいる!”と、楽しんでいただくだけでもいいんです。次に、そこから動物の生態などに興味を持っていただいて、気づきと学びを与える教育普及という役割。そして、今、世界中でどんどん動物が少なくなってきているので、そうした動物の命を繋いでいく種の保存という役割、そして研究です。野生生物を365日飼育、観察しているからこそわかってくることがあります。研究してわかったことを展示して、皆さんに知っていただいたり、それを教育普及したりと、4つの役割は繋がっている感じです」(金尾さん)。

緑と光いっぱいの「沖縄こどもの国」

レクリエーションの場として長く地元に愛されてきた「沖縄こどもの国」。緑と光いっぱいの園内に癒されます


動物を間近に観察できる動物園

動物を間近に観察できる動物園は、子どもたちの大好きな場所であり、貴重な教育の場でもあります

琉球孤の生き物に出会える

動物たちが住む環境によって5つのエリアに分けられている動物園ですが、メインゲートを通って一番最初にある「琉球孤」エリアでは、九州の南端から沖縄を経て台湾まで連なる島々に生息する、世界中でここにしかいない動植物や在来家畜を飼育展示しています。

 

「沖縄にある動物園として、琉球孤の生き物たちを大切に守っていくと共に、もっとたくさんの人に知っていただきたいという思いで、動物園の中でも最も重点を置いているエリアです。希少な野生動物だけでなく、昔から人々の暮らしを支えてきた馬、豚、ヤギなどの在来家畜が展示されています」と、金尾さん。

 

例えば、食用としてだけでなく、魔物を払うとして儀礼に備えられていた文化を持つ「島ウヮー(沖縄在来豚)」や、鳴き声が美しい「ウタイチャーン(沖縄在来鶏)」など、人との関わりの中で存続してきた在来家畜は、そうした文化も含めて伝えていかなければ永遠に失われてしまう危機にあると言います。

琉球孤には固有種や亜種が多く生息

琉球孤には固有種や亜種が多く生息し、顕著な生物多様性が認められています

 

与那国島の在来種、与那国馬

与那国島の在来種、与那国馬。乗馬体験も人気です

 

島の暮らしに深く関わってきた島ウヮー

島の暮らしに深く関わってきた島ウヮー。ウヮーとは沖縄の方言で豚のこと

楽しいだけではもったいない

動物たちと直接ふれあえる「どうぶつ広場」は、今も昔も子どもたちに一番人気があるエリアです。昔と違うのは、そのふれあい方。以前はウサギやモルモットに自由にさわれる場所でしたが、現在は動物たちの特徴を知り、動物たちに与えるストレスなどを考慮した正しいふれあい方を学べる場所になりました。

 

「せっかく動物園に来たのに、楽しいだけではもったいないということで、リニューアルを機に体験プログラムを始めました。まず、モルモットについてゲーム形式で観察しながら学んでもらいます。そして、できるだけ動物に負担にならないさわり方をレクチャーしながら、ふれあい体験も楽しんでもらっています」と、どうぶつ広場担当の高良奏美さん。

 

基本は予約制(空きがあれば当日参加も可能)で、動物たちにも負担が少なく、子どもたちにとっても宝物になるような体験を提供しています。

モルモットのからだの特徴について学ぶ子供たち

モルモットのからだの特徴について、福笑い形式で楽しく学びます

 

動物に負担をかけないさわり方をレクチャー

動物が嫌がらない、動物に負担をかけないさわり方をレクチャー

モルモットに触れる子ども

モルモットと仲良くなれるように、やさしくやさしくさわってね

基本にあるのはアニマルウェルフェア

動物たちがエサを食べている様子を観察できる「くわっちータイム」は、子どもから大人まで大人気のプログラム。飼育員の皆さんは、それぞれの動物の生態に合わせてエサのあげ方を工夫しています。

 

例えばキリンの場合。キリンは緑の木々に囲まれた環境下で暮らすと枝についている葉を自分で折って食べるため、高いところにエサを置いたり、回数を1回ではなく3回に分けたり。元々の生態に合わせた食事をすると、実際に、動物たちの健康の数値が良くなるそうです。

 

「動物たちが幸せそうであれば、見ている私たちも幸せな気持ちになりますよね。

動物たちがいきいきと楽しく過ごしている様子を見て、来園者の方に興味を持っていただくことが大切ですので、動物たちがストレスを減らして健康的に暮らすことを目指す、アニマルウェルフェア(動物福祉)を良い状態で保つことを大前提として、動物園を運営しています」(金尾さん)

 

動物たちの食事の様子を観察できる「くわっちータイム」

動物たちの食事の様子を観察できる「くわっちータイム」

 

キリンの食事の様子

キリンのエサとなる葉付きの木の枝は、できるだけ高いところに設置します

 

マレーグマのエサは湯たんぽに入れて渡される

マレーグマのエサは湯たんぽに入れて、時間をかけて中から取り出す楽しみを与えています

元の生活環境にできるだけ近づける工夫

かつての動物園のイメージは、狭い檻の中で動物たちがじっとしているか、不自然に動き回っているか、でした。今、動物園では、動物たちに過度のストレスを与えていた飼育環境を見直し、できるだけその動物が生息する環境に近い状態での飼育展示を目指しています。

 

インドゾウのいる「草食獣のあしびなー」には大きなガジュマルの木があります。「メスのゾウは群れで行動する生き物ですが、ここにはメスゾウが1頭しかいないので、仲間としてのきずなを築けるように遊んだり、一緒に周りの掃除をして仲間意識を持てるようにしています」と、ゾウ担当の生田陽太さん。

 

飼育環境のリニューアルも進んでおり、できるだけ1種の動物で広いスペースを使ったり、種の特性を生かした飼育ができるように変わってきています。ヤクシマザル担当の中村智映さんは、「新しい獣舎では、ヤクシマザルが生息する屋久島の沢沿いをイメージして石を組んだり、お客さんが歩いている通路の上を通れるようにしたりと、かなり立体的に活動できるようになりました。サルたちも前の獣舎より楽しそうにしています」と話してくれました。

 

インドゾウに乗る人

インドゾウに乗るのは、仲間として認識してもらうための深い「遊び」だそう

 

ヤクシマザルと飼育員

新しい獣舎では、ヤクシマザルたちが以前より活発に動くようになったそう

沖縄こどもの国

住所 /
沖縄県沖縄市胡屋5-7-1
営業時間 /
平日9:30~17:30(入園は16:30まで)
土日祝日9:30~21:00(入園は20時まで)
※特別イベントの際は営業時間を変更する場合があります。
定休日 /
火曜日
料金 /
16才以上1000円、15才以下無料
Webサイト /
https://www.okzm.jp/

沖縄CLIP編集部

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放送日:2024.12.23 ~ 2024.12.27

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