農とダブルダッチ 南くるファーム
農とダブルダッチ 南くるファーム
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歴史文化
放送日:2026.03.02 ~2026.03.06
初回投稿日:2026.03.11
最終更新日:2026.03.11
最終更新日:2026.03.11
目次
本島南部に位置する南城市。太陽がさんさんと照り注ぐビニールハウスの中で、農家のMASAさんが作業に励んでいます。
「植物にも表情があるんですよ。毎日観察することで、水が足りないとか、虫が来ているとか、そういう変化に気がついてあげられる。農業でいちばん大事なのは愛情だと思います」
そういいながら、愛おしそうにハウスの中を丁寧に見て回るMASAさんです。

ハウスは奥武島と海を望む気持ちの良い場所にあります

まるで人に話しかけるように、植物に優しく声をかけるMASAさん

MASAさんが育てている肉厚で甘みのあるピーマン。苦味が少なく、生食がおいしい

安心安全な管理で育つピーマン
データと技術を駆使し、効率よく安全に育てる
現在、MASAさんが農業で取り入れているのが、「天敵栽培」と「ファーモ」という機械です。
天敵栽培とは、害虫対策としてその害虫を食べてくれる天敵(ピーマンには無害な昆虫)を活用する方法です。天敵の力を借りることで、農薬の使用を抑えることができます。
ファーモは温度・湿度・日射量・二酸化炭素量・飽差・地中温度など、生育に関わるさまざまなデータをスマホでリアルタイムに確認できるシステムです。
安心・安全で、できるだけ効率のよい野菜づくりを目指して、MASAさんは日々研究を重ねています。

写真の白い機械がファーモ。栽培を管理しています
世界大会優勝からシルク・ドゥ・ソレイユの舞台へ
宜野湾市出身のMASAさんは、大学進学を機に上京。体育大学へと進みました。大学のサークル勧誘でダブルダッチと出合い、キレのある動きと迫力あるパフォーマンスに衝撃を受け、その世界へ飛び込みました。
「ダブルダッチができれば、女の子にモテるかもしれない、と真剣に思っていましたよ」と笑うMASAさん。
練習を重ね、やがてパフォーマーとして強豪チームに加入。2006年、カナダ・トロントで開催された世界大会に日本代表として出場し、見事優勝を果たします。
その後は人気舞台『マッスルミュージカル』にも出演しました。
さらに2011年、シルク・ドゥ・ソレイユのオーディションに合格。世界各地の公演に参加し、巡業生活が続きました。
町への恩返し、ゴミ拾いが評価された日
シルク・ドゥ・ソレイユに加入して最初に立った舞台は、世界遺産に登録された城跡が残る歴史の町、カナダのケベックでした。
しかし、その町はゴミが目立ち、お世辞にも美しいとは言えない状態でした。
「お世話になる町だからこそ、何日もかけてゴミを拾い、使った施設もきれいにして返していました。行く先々でも、町への感謝の気持ちとして、仲間たちと同じようにしていました」と振り返ります。
この取り組みはやがてシルク・ドゥ・ソレイユの内部でも話題となり、ミーティングの場で「こんなことをやっている日本人がいる」と紹介され、表彰を受けることになりました。
さらに、「日本人は時間通りに来るし、ちゃんと話を聞く。聞く姿勢もいい」
MASAさんにとって当たり前のことが、世界では高く称賛されました。
「日本では普通のことが、こんなにも評価されるんだなと感じて、そこは日本に感謝でしたね」
世界を旅して気づいた「食べるもの」の力
体が資本のパフォーマーとして生活を続ける中で、MASAさんは食を強く意識するようになりました。
「シルク・ドゥ・ソレイユに行って、食の大切さに気づいたんです。食べたものがそのまま血となり肉となる。だからこそ、食べるものは大事だなと思いました」
その気づきは、幼いころから「農業こそが大切な仕事だ」と語り続けていた父の言葉ともつながっていきました。
子どもの頃のMASAさんにとって、あたいぐわぁ(庭の小さな畑)の手伝いはとても苦手でした。草刈りの音で朝早く起こされ、蚊に刺されながら作業をするのが嫌で仕方がなかったといいます。
「自分は絶対にこんな仕事には就かないと思っていました」
しかし世界を巡る中で、体と食について深く考えるようになったとき、父の言葉がようやく腑に落ちたそうです。コロナ禍がもたらした転機
そんな充実した日々を送っていた2020年、新型コロナウイルスの影響で公演はすべて中止となり、帰国を余儀なくされました。
当初はすぐに再開すると思われたシルク・ドゥ・ソレイユですが、状況は長引きます。MASAさんは将来を考える中で、別の道を模索するようになりました。
そんな中、兄が持ってきたピーマンとの出合いが、人生の転機となりました。
その大きなピーマンをひと口食べた瞬間、甘さとみずみずしさに感動しました。
「ピーマンは苦いというイメージだったのに、こんなに甘くて食感が楽しいピーマンがあるんだ!こんな野菜を自分も作ってみたい」
そう思ったとき、MASAさんの中で次の道がはっきりと見えてきました。
「次のステージは、農業の世界で挑戦してみよう」
そう決めると、すぐに行動に移しました。専門農家を訪ね「給料はいりません。学ばせてください」と頭を下げます。
こうしてMASAさんは、ゼロから農業を学ぶ修業の日々へと踏み出していきました。

ダブルダッチは、2本の縄に合わせて飛ぶパフォーマンス。MASAさんは、2009年1分間のスピード記録で202回をマークし、ギネス世界記録保持者となり、さらに2011年には215回で記録を更新しています

2012年から2020年までシルク・ドゥ・ソレイユの団員として世界中で活躍しました

「農業は経験だけでなく、観察と研究の積み重ねだなと思います。やった分だけ結果が出るところは、ダブルダッチと同じですね」
ダブルダッチ普及活動も継続
農業に転身した今も、ダブルダッチとの関わりは続いています。
現在は日本のダブルダッチチーム「日本ジャンプロープ連合」の沖縄支部長を務めるMASAさん。学校や地域イベントでワークショップを開催し、パフォーマンスと体験を組み合わせて、子どもたちに競技の楽しさを伝える活動を続けています。
世界大会を経験した技や楽しさを、次の世代へつなぐことも大切な役割だとMASAさんは考えています。

「ダブルダッチを体験した子どもが、手応えを感じた瞬間の表情や、それを見守る親御さんの姿を見るのが本当に嬉しい」とMASAさん
子どもたちの収穫体験
南城市の畑では、食育活動の一環として収穫体験も行っています。子どもたちはハウスに入って、ハサミを持ち、自分たちでピーマンを収穫します。
自分で採った野菜をその場で焼くバーベキューでは、「ピーマンが本当に嫌いだったのに食べられた」そんなうれしい声が聞こえます。
野菜が生まれる場所を知ることで、子どもたちの食べ物への見方が変わるのです。
世界に出て初めて気がついた父の教えを、MASAさんは今、畑で子どもたちに伝えているのですね。

野菜が生まれる場所を知る貴重な体験

親子で楽しめる収穫体験のリクエストは多いそう
チャレンジの心を忘れずに沖縄の南から世界を目指す
MASAさんは今、地域の農家さんに支えられて野菜を作り続けられていることに感謝し、まずは「地域で評価される農家」になることを目標としています。
農業を始めて5年目ながら、すでに県内外の一流レストランから高い評価を受けるピーマンをはじめ、質の高い野菜を作り続けているMASAさん。
「自分のテーマはチャレンジなんです」。
その言葉通り、今後も新しい野菜への挑戦を続けていきたいそうです。
「南くるファーム」という農園名には、「まくとぅそーけー、なんくるないさ」(一生懸命頑張っていれば、いつかなんとかなる)という沖縄の方言と、「沖縄の南から世界へ」という思いが込められています。
世界一を制したMASAさんだからこそ見える景色。
その視線の先で、MASAさんは今日も沖縄の土に世界を見据えた種を蒔き続けています。

今日も出荷の準備に大忙しのMASAさんです
南くるファーム
沖縄CLIP編集部
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