もったいないで思いをつなげる《くろとんフーズ》
もったいないで思いをつなげる《くろとんフーズ》
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歴史文化
放送日:2025.11.10 ~2025.11.14
初回投稿日:2025.11.18
最終更新日:2025.11.18
最終更新日:2025.11.18

かわいらしい黒豚のロゴマークが目印のくろとんフーズ
黒豚屋から続く家業のルーツ
うるま市みどり町にある学校給食向け食材加工の株式会社くろとんフーズ。
40年前に両親が創業し、2019年に息子の玉城翔伍さんがその想いを受け継ぎました。
その原点は、50年以上前、翔伍さんの母方の祖父と親戚が沖縄市の銀天街で営んでいた精肉店「黒豚屋」にあります。
そこから学校給食向けの食材提供を始め、後に魚部門を立ち上げ、現在の事業へと発展しました。社名の「くろとん」と黒豚のロゴマークには、その精肉店時代の名残が息づいています。

冷凍のマグロを一つひとつ手作業でカットしていきます

くろとんフーズ代表の玉城翔伍さん
給食を支える「縁の下の力持ち」
くろとんフーズは、中部地域を中心に、浦添から宜野座まで 計18市町村・16の給食センターへ加工食材を納品しています。
献立は各センターの栄養士が決め、くろとんフーズはその内容に合わせて、魚や野菜、さらには一部の肉類までを仕入れ、加工から味付けまで手作業で行っています。
また、食材を下ごしらえ済みの状態で納品することで、短時間で数千食を仕上げる現場のニーズに応えています。
「納品した食材は給食センターで調理され、子どもたちの給食になります。多いところでは1センターあたり1日7,000〜8,000食を作っています。
すべてを手作業で行うのは、フードロスを限りなく減らすためでもありますし、子どもたちの口に入るものだからこそ、異物や金属片が混入しないよう、一つひとつ目で確かめています。
6万人規模の子どもたちが毎日食べる給食です。安心・安全が何より大事。
何ごともなく、いつも通りに食べられること、その当たり前を守ることが、私たちの一番の使命だと思っています」

お母様の留美子さんは、現在はアドバイザーとして工場内の管理にあたっています

フードロスに新たな価値をつけたいとオープンした「くろとんFOODMARKET」
大量に発生するフードロスの現実
「何百キロ単位で仕入れた肉を加工すると、上下の部分や筋の入った部分がどうしても出てしまいます。1日300本ほどを加工する中で、何十〜何百キロものロスが生まれます。
マグロは月に1〜2トンの注文がありますが、そのうち約20%、およそ400キロがロスになります。野菜も同じで、たとえば給食センターから82キロの注文があっても、仕入れは10キロ単位のため、端数がそのままロスになるんです」
長年、学校給食の裏方として地域を支えてきた同社ですが、翔伍さんが地元に戻ってからは、「このロスをなくすために何かできないか」と考えるようになりました。そこで、加工の過程で出る切り落としや端材を有効活用し、一般向けに販売する場として立ち上げたのが 「くろとんFOOD MARKET」 です。
「もともと母の友人や親戚から、ここの魚がおいしいから分けてほしいと、よく頼まれていたんです。だったらお店を作って、地域の人にも届けられるようにしようと思いました」
これまで配達トラックのロゴでしか知られていなかった同社ですが、店を構えたことで、どんな会社で、どんな人たちがどんな思いで働いているのかを知ってもらえる場所にもなり、地域での信頼はさらに深まりました。

店舗では、給食用の切り落とし部分を活用した商品や、地域の農家さんの規格外野菜を直売しています

給食で提供されるハムカツやサーモン、サバなどは、お弁当箱にもちょうどいいサイズと人気の商品となっています
フードロスを生かしたペットフード事業
また、病気のお父様が自宅で過ごす時間を少しでも穏やかにしたいと、家族で一匹の犬を迎えたことをきっかけに「KUROTON PET」 と名付けたペットフード事業も立ち上げました。
「最初はペットショップで市販のおやつを買っていましたが、魚のフリーズドライのペットフードを見たとき、“うちの工場なら、学校給食レベルの無添加で安心・安全なワンちゃん用のおやつが作れる” と思ったんです」と翔伍さん。
現在は、県産のマグロやカツオを使ったフリーズドライのおやつのほか、農家の規格外野菜(さつまいも・人参・かぼちゃ)と切り落としのマグロ、サーモン、肉などをミックスした、無添加・無味付けのトッピング「テリーヌ」 も開発しています。
ペットショップオーナーの声を取り入れながら改良を重ね、事業は3年目。
KUROTON PETの商品は県内各地のペットショップで販売され、中でもテリーヌは アレルギーのある犬にも安心で、食いつきが良いと評判 になり、リピーターも増えています。

飲食店での経験豊富な店長の平良友基さんは、店頭での接客や仕入れのほか、ペットフードの商品開発にも力を入れています

フリーズドライのペット用おやつ

「愛犬の食いつきがいい」とリピーターも多いトッピングのテリーヌ
地域・生産者との連携規格外野菜の活用
農家は、形や大きさが基準に合わない規格外野菜を 一般の流通にのせられないという課題を抱えています。こうした野菜は、畑に捨てられたり、焼却処分されたりすることもあります。
くろとんフーズでは、その規格外野菜を買い取って加工し、給食センターへの提案や店舗での販売につなげています。
この日訪れた宮城島の芋農家「TIN FARM」の田中さんからも、主に規格外の芋を仕入れています。
「正規品と同じように手間と愛情をかけて育てられた野菜は、味も栄養も変わりません。見た目やサイズだけで廃棄されるのはもったいない。 僕たちは、そうした野菜にも確かな価値があると思っています。
くろとんFOOD MARKETに来てくださるお客さんにも、このような背景を知ったうえで手に取っていただけたらうれしい。くろとんFOOD MARKETは、地域の“もったいない”とお客さんをつなぐ場所だと思っています。
まだまだ使い切れていないフードロスはたくさんあります。困っている農家さんとの連携を広げ、規格外の食材を活用した新たな商品づくりにも挑戦し、地域の人々やペットオーナーの思いをつなぐ場所として育てていきたいです」
と、翔伍さんは熱く語ってくれました。

宮城島の芋農家TIN FARMの田中さんと翔伍さん

見た目は悪くてもとってもおいしい黄金芋。「規格外の芋も、くろとんフーズさんに納品できるので本当に助かっています」と田中さん

田中さんの黄金芋をスライスしてチップスに。近所の学童保育園児たちのおやつになっています
くろとんFOOD MARKET
- 住所 /
- 沖縄県うるま市田場1825-1
- TEL /
- 098-989-9784
- 営業時間 /
- 11時〜19時
- 定休日 /
- 日・月曜日
- Webサイト /
- https://www.kuroton-foods.com/foods
- Instagram /
- https://www.instagram.com/kuroton_food_market/
沖縄CLIP編集部
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