犬を信じる《NPO法人ワンズパートナーの会》

犬を信じる《NPO法人ワンズパートナーの会》

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歴史文化

放送日:2025.09.22 ~2025.09.26

初回投稿日:2025.10.01
 最終更新日:2025.10.01

最終更新日:2025.10.01

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南城市大里にある沖縄県動物愛護管理センターでは、犬や猫、ウサギ、爬虫類など、さまざまな動物を収容しています。

森や畑で、街で、ブリーダー遺棄、多頭飼育の現場などで保護された動物たちがこのセンターには集まってきます。

共通しているのは、飼育放棄など、人間の無責任がこうした行き場のない動物を生み出しているということ。

一頭でも多くのいのちを救いたいと、犬を保護・里親探しに奔走するボランティア団体「NPO法人 ワンズパートナーの会」の皆さんとセンターにお邪魔しました。

 

さまざまな動物を収容する沖縄県動物愛護管理センター
さまざまな動物を収容する沖縄県動物愛護管理センター

ボランティアがいなければ時間に限りがあるいのち

沖縄県動物愛護管理センター副所長の三輪英一さんは話します。

「ワンズパートナーの会をはじめとするボランティア団体の方たちが、毎日のようにして来所し収容状況を確認、里親に出せそうな犬を引き取ってくださるおかげで、2023年・2024年度は、殺処分ゼロという結果になりました。

しかし、これはあくまでもボランティアの方たちがギリギリのところで頑張ってくださっているからの数字であって、県内の飼育状況が大幅に改善されているというわけではありません。

動物を飼ったら、捨てない・逃がさない。飼い主の責任のもと、天寿を全うさせてあげてほしい。最後まで責任を持って飼育するためには、動物の特性をきちんと調べて、少しでも不安があれば、飼い始めることを思いとどまることも大切。

どうしても飼育が困難になった場合は、新しい飼い主を探すことを徹底してほしい。このことを飼い主には特にお願いしたいです」

ペットが逃げた場合は、自分で探すと同時に、まずは公的機関(センターや市町村役場、地域の警察)へ問い合わせること、早期の対応が大切です。

条例では、犬の放し飼いは禁止されていますが、沖縄では犬を放し飼いしている家庭も多く、逃げても探さない飼い主もいるようです。

沖縄県動物愛護管理センター副所長の三輪英一さん

「犬がいなくなったらまずは探してほしい」と三輪さん
 

ワンズパートナーの会のボランティアたち

ワンズパートナーの会のボランティアたちは、ほぼ毎日センターを訪れて、里親に出せそうな犬から優先的に引き取り、※預かりボランティアへ委ねます

※預かりボランティアとは、センターなどから引き取った犬を、ワンズパートナーの会といったボランティア団体と連携して、里親が見つかるまで一時的に預かる家庭のこと

ケージ内の動物

野犬化して臆病な犬や、不適正な飼育方法によって、咬傷や攻撃的行動がある犬は、他の犬と同じスペースで収容できないため、一頭ずつケージに入れます。

※沖縄県動物愛護管理センター収容の犬の画像は2025年8月28日時点のもの

愛情をかければ犬を捨てる理由はない

ワンズパートナーの会ボランティアリーダーの上地晴美さんは話します。

「私たちは、会で保護したり、センターから引き取ったりして、年間約300頭を救助しています。そのうちの約半分は沖縄県内で譲渡し、残りは県外のボランティア団体へ送ります。沖縄県内だけでは里親を探しきれないのが現状です。

ここ2年はセンターでのガス室での殺処分はありません。しかし今のペースで収容犬が増えたら、今後はどうなるかはわかりません」

捨て犬問題の根本原因は、飼い主の責任意識の欠如にあります。犬は本来、群れのリーダーのもとで安心して生きる社会的な動物。しかし、この習性を理解せずに安易に犬を飼い始める人が少なくありません。

しつけもしないで、一方的にかわいがり、犬が飼い主の指示に従わなくなると、飼い主は犬との距離を感じるようになり、次第にかわいいとは思えなくなっていく。

最終的には世話を放棄し、犬が行方不明になっても捜索すらしない状況に陥ります。

上地さんたちは保護活動や里親探しに奔走する一方で、犬との正しい共生について理解を深めてもらう活動も行っています。

上地さんが続けます。

「当会が発足した2007年から現在まで、助けることができなかった犬は27,926頭。飼い犬の中には、何らかの事情で脱走し、交通事故に遭って瀕死の状態でセンターに運ばれるものの、そのまま命を落とすケースがあります。また、老犬であれば衰弱死することもあります。

愛されていたのに、死ぬ時は寂しく一人で逝かせてしまう、これは人間の都合に過ぎません。脱走対策はしっかりと行い、『逃がさない』、『逃げたら探す』を忘れないでください」

 

ワンズパートナーの会ボランティアの上地さん
ワンズパートナーの会ボランティアの上地さんは、主に問題行動のある犬を常時10頭ほど預かり、人間への不信感を取り除き、里親が見つかるようにしつけをしています

善意で運営されるワンズパートナーの会

団体の運営費は、すべて寄付で賄われています。例えば、犬の治療費、去勢・避妊費・ドッグフード・ペットシート・おやつ…。ボランティアさんたちの持ち出しも少なくありませんが、「助かるいのちは救いたい」という思いだけで団体は維持されています。

毎月第4日曜日は、浦添市のホームセンター「メイクマン」で譲渡会を開催しています。各地の預かりボランティアのところにいる犬たちが一堂に会するとあって、毎回たくさんの犬好きな人たちが集まります。

受付カウンターで、里親の申し込みも行っています。犬と共生することへの意識や飼育・家庭環境などを細かく聞き取り、実際に飼育する現場も確認してから譲渡という運びになります。

「審査や面談は厳しいぐらいだと思いますが、二度と犬を悲しい目に遭わせることはできないので」と上地さん。

活動のスタートは預かりボランティア

上地さんと同じく、ワンズパートナーの会でメインボランティアとして活動する前山田留美さんは、15年ほど前、友人の紹介で「ゴンジ」という黒い雑種犬の預かりボランティアになったことがきっかけでした。

フリーランスの前山田さんの仕事は在宅で、当時暮らしていた住宅は、約90平方米の広さがあり、屋上も利用できたため、犬を遊ばせるのに十分な環境。

「いのちを救う手助けができるなら」

という思いから、本格的にボランティアとして活動を始めました。


広い庭付きの外人住宅

現在は、犬たちのために購入した広い庭付きの外人住宅で暮らしています。一軒家の場合、脱走防止用のフェンスやゲートは必須

捨てられて変わるいのちの呼び名

前山田さんはいいます。

「飼い犬の時には立派な名前があるのに、捨てられると、捨て犬、野良犬、野犬、保護犬と同じいのちなのに名前が変わる。全ては人間の身勝手が作り出した呼称です」

前山田さんの自宅で預かるのは、一般の預かりボランティア宅では飼育しきれない犬たち。

くるくるとかわいく前山田さんにまとわりつくコッリ。彼は畑で保護された後、まもなく膀胱破裂によって尿が腹腔内に漏れ、膀胱の石灰化も進んでいました。

発見した医師からも「助かる見込みはない」と告げられましたが、懸命にミルクを飲もうとする姿に心を打たれた支援者たちと前山田さんが献身的な介護を続けました。

その結果、コッリは見事に回復・成長し、現在では庭のドッグランを元気に走り回り、自力で足を上げて排尿できるまでになりました。
 

甘えん坊のコッリ

甘えん坊のコッリ

前山田さんの膝の上で嬉しそうな黒い犬トール

前山田さんの膝の上で嬉しそうなトール。犬たちは皆、前山田さんの膝の上を狙っています

北部支部のボランティアスタッフ、ウォーカー志保さん
北部支部のボランティアスタッフ、ウォーカー志保さん

病気も防ぐ去勢・避妊

前山田さんたちは、子犬や自力では生きていけない緊急性のある犬の情報が入ると、保護活動に出向くこともあります。

「北部はとにかく多頭飼育崩壊が多いんです。2023年、2024年度と殺処分はゼロですが、持病や劣悪な環境による疾患などで救えないいのちもあります」(北部支部担当のウォーカー志保さん)

「去勢・避妊を行わず、管理できない環境での飼育では、近親交配も少なくありません。無計画な繁殖は、多頭飼育の破綻につながる。また、去勢・避妊により予防できる病気は数多くあります」と、前山田さんは強く訴えます。

犬は必ず応えてくれる

前山田さんの家にいる白い雑種のグレイスは、浦添城址のハクソーリッジで子育てをしていた母犬でした。

それまでの経験から、長期間野良だった犬をしつけ直して里親に出すのは難しいとされていましたが、前山田さんは、「馴れなくてもいい。子犬を保護するなら母犬も連れて帰ろう」と責任を持つことを決意。

「人間なんて信用しない」とばかりに人間を睨みつける悲しい瞳。それから約4カ月間、前山田さんはグレイスが心を開く時をじっと待ちました。

前山田さんの覚悟と愛情を感じ取ったのか、グレイスは少しずつ警戒心を解きました。しかし、そこからさらに60日間、グレイスと前山田さんの壮絶な訓練が始まります。

下記の写真からはグレイスの心の中が見て取れるよう。表情はどんどん穏やかになり、今では、本来の明るい笑顔も見せてくれて、平穏な日々を送っています。

ですが、一度傷ついた記憶が消えることはあるのでしょうか?

 

ハクソーリッジで発見された当時のグレイスの子ども
ハクソーリッジで発見された当時のグレイスの子ども


じっと人間を睨みつける犬

じっと人間を睨みつけていました


顔の硬さが少し和らいできた犬

20日目ぐらい。顔の硬さが少し和らいできました


笑顔を見せる白い犬

前山田家の一員となったグレイス。満面の笑みで前山田さんを見つめます


訓練された犬たちは、前山田さんの歩調に合わせて歩きます

訓練された犬たちは、前山田さんの歩調に合わせて歩きます

 

前山田さんは話します。

「犬を飼うなら、自由と無秩序をはき違えないで、犬に社会的なルールを教えることは、飼い主の責任です。

現在、犬を飼っている方も、犬の習性を理解し、本当に犬と仲良くできているか見つめ直してほしい。人間同士が仲良くなるためにコミュニケーションが必要なように、犬との関係も同じです。

犬は教えれば学び、必ず応えてくれる動物です。犬との信頼関係が築けたら、これほど幸せで楽しいことはありません」

 

NPO法人 ワンズパートナーの会

https://onesdog.net/

毎月第4日曜日 浦添市「メイクマン」3階駐車場特設会場にて譲渡会開催
単発の譲渡会もあるので、月初にインスタグラムをチェックしてください

https://www.instagram.com/wanspartner/

沖縄県動物愛護管理センター

https://www.aniwel-pref.okinawa/

沖縄CLIP編集部

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