農業が繋げる和を夢見て《和花の畑》

農業が繋げる和を夢見て《和花の畑》

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歴史文化

放送日:2025.05.19 ~2025.05.23

初回投稿日:2025.05.26
 最終更新日:2025.05.26

最終更新日:2025.05.26

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糸満市の武富にあるハーブ農園「和花の畑」を訪れました。

ビニールハウスに足を踏み入れると、さわやかなハーブの香りが広がります。

この農園を主宰するのは、糸満市出身の諏訪咲希さん。

1年ほど前、地域で親しまれてきた「岸本ファーム」の畑を受け継ぎ、ハーブや原種の薬草、島野菜、エディブルフラワーなどを栽培し、県内の飲食店を中心に出荷しています。

咲希さんが育てる作物は、味が濃くて香りが高く、日持ちが良いと評判です。

そうした評判を聞きつけた一流レストランのシェフたちも、わざわざ農園に足を運びます。

ビニールハウス内

子どものころから憧れた農家という仕事

咲希さんが農業に興味を持ったきっかけは、小学生のころに図書館で借りた一冊の本でした。無人島に漂流した少年が一人で自給自足の生活をおくる物語に衝撃を受け、食料を自給することに興味を持ちます。

さらに、海外で農業技術を伝えるシニア協力隊を書いた本にも感銘を受け、「自分も食べ物を生み出す人になりたい」と農業を志すようになります。

人付き合いがあまり得意ではなかった咲希さんにとって、農業は黙々と自然と向き合える仕事かもしれない、そんな思いもありました。

色とりどりのエディブルフラワー
色とりどりのエディブルフラワーたち。和花の畑では、少量多品目の作物を育てています

和花の畑の諏訪咲希さん
農業を愛する咲希さんの思いは、その笑顔が語っています

運命を変えた岸本洋子さんとの出会い

農家になる道筋が見えなかった咲希さんは、まずは大学の農学部へ進みますが、卒業後は農業とは直接関係のない企業に就職します。

しかし、農業への夢を諦めずにいたところ、農業に理解のあった当時の会社の社長から「岸本ファーム」の岸本洋子さんを紹介されました。

「最初は週末ごとに岸本ファームに行って、草取りを手伝ったり、好きなものを植えさせてもらっているうちに3年が経ち、意を決してここで就農させてもらうことになりました。

当時の岸本ファームでは、多品目を少量ずつ栽培し、県内外のレストランに出荷していました。

県内のレストランに直接届けるスタイルで、私も配達に同行していました。

洋子さんは、自分たちが作ったものを、料理人の方に直接手渡すことが大事だと教えてくれ、農業とは、実はすごく人と関わる仕事だと教わりました。

また、洋子さんは、一般家庭にもハーブを普及させたいと、積極的に活動していて、ワークショップなどを通して、農業と人をつなぐ大切さも教えてくれました」

やがて洋子さんが病気で入院することとなり、それを機に咲希さんは本格的に独立を後押しされます。

「病気が発覚する1年ほど前から、自分の屋号を持ち、独立という形でレストランとの取引なども徐々に引き継いでいるところでした。活動自体は変わらず一緒にしていたので、病気を発端に、営農をようやく自分事として捉えることができたのではないかと思います。そのぐらい洋子さんを頼りにしていました」

出荷を手伝う咲希さんのお母さま、末次悦子さん(左)と仲間の榊原英実さん
出荷を手伝う咲希さんのお母さま、末次悦子さん(左)と仲間の榊原英実さん

週に一度の岸本商店

咲希さんは、旧岸本ファーム時代から続いていた、青空市「岸本商店」を引き継いでいます。

毎週水曜日の数時間だけオープンする岸本商店には、自社の野菜やハーブ以外にも、近隣農家さんの野菜や和花の畑のバジルを使ったパウンドケーキなどが並びます。

青いノボリが営業中の目印
毎週水曜日、青いノボリが営業中の目印

ボードには旬の野菜やハーブの名前がずらり

旬の野菜やハーブがずらり


店頭に並ぶ野菜や商品など

那覇からもわざわざ足を運び、袋いっぱいに野菜やハーブを詰めているお客さんもいました


農業を行う女性
「娘のおかげで、素晴らしいお人柄だった岸本洋子さんにもお会いできましたし、農業の楽しさも教えてもらえました」と悦子さん

たこ焼き
岸本商店では、農薬を使わずに咲希さんが育てた小麦で作るたこやきも販売。味が濃くて美味しい!

農業を通して繋げる和

咲希さんは現在、琉球大学で小麦の栽培を研究している夫のサポートも受けながら、自身も農薬を使わずに小麦を育てています。

糸満各地にある畑を夫婦で協力しながら管理したり、収穫したりと二人三脚の活動です。

咲希さんの小麦で作るたこ焼きは、今では岸本商店の看板メニュー。楽しみにしているお客さんも多いです。

数年前に大豊作だったライ麦を、当時商店のお客さんだったサンサンポさんにお裾分けしたところ、素晴らしいヒンメリ(ライ麦に糸を通して多面体を構成し、つなぎ合わせて吊るすフィンランドの伝統的な装飾品)となって生まれ変わり、2025年の沖展では、入賞を果たすほど高い評価を受けました。

また、自社で育てたティートゥリーから精油を製品化。パッケージは、包装を設計するところから、咲希さんの妹でデザイナーの渡嘉敷みなみさんが手がけました。

ゆくゆくは、父や弟が働く事業所とも連携して、みなで商品を作っていきたいと、咲希さんは意欲を語ってくれました。

収穫を待つ小麦畑
収穫を待つ咲希さんの小麦畑

サンサンポさんのヒンメリ
サンサンポさんのヒンメリ

ティートゥリーの精油は、原料からパッケージまで、すべてを手づくり

ティートゥリーの精油は、原料からパッケージまで、すべてを手づくり


畑の前で立つ笑顔の女性たち
岸本洋子さんと咲希さん
 

咲希さんはいいます。

「種から芽が出て育っていく植物の成長を感じたり、作った野菜を子どもたちが食べてくれたらうれしい。正直、畑で土に触れて草取りをしているだけでも楽しいです。

好きでやっている農業ですが、実は、農業をさせてもらっているといったほうが正しいですね。家族にはいつも感謝です。

そして、岸本洋子さんと出会えたことは、私の人生にとって本当にすごいことだと思います。

洋子さんには「ハーブをもっと身近に楽しんでほしい」という夢がありました。フレッシュハーブティーをはじめ、いろいろな形でハーブを生活に取り入れるアイデアを発信し続けていたので、私がその夢をしっかりと受け継いでいきたいと思います」

和花の畑

住所 /
沖縄県糸満市武富583―1
Instagraum /
https://www.instagram.com/wakanohatake/

沖縄CLIP編集部

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放送日:2025.05.19 ~ 2025.05.23

  • 放送日:2025.05.19

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  • 放送日:2025.05.22

  • 放送日:2025.05.23

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