ビールを造り、まちをつくる《浮島ブルーイング》

ビールを造り、まちをつくる《浮島ブルーイング》

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歴史文化

放送日:2026.01.05 ~2026.01.09

初回投稿日:2026.01.14
 最終更新日:2026.01.14

最終更新日:2026.01.14

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クラフトビールでまちづくりに取り組む

「沖縄の酒」というと、まず泡盛を思い浮かべる方が多いでしょう。でも実は、沖縄には小規模なクラフトビールの醸造所(マイクロブルワリー)が多数あり、県内各所でそれぞれオリジナリティあふれるビールを製造販売しているのです。その一つが、那覇市牧志の浮島通り沿いにある「浮島ブルーイング」です。


浮島通りと市場中央通りが交差する角に建つビルの3階にある浮島ブルーイングのタップルーム(店舗)

浮島通りと市場中央通りが交差する角に建つビルの3階に、浮島ブルーイングのタップルーム(店舗)があります

 

このブルワリーを運営するのは、愛知県出身の由利充翠(ゆり・みつあき)さん。由利さんは大学入学を機に来沖し、大学では都市計画を専門に学びました。大学院卒業後は自治体などと連携し、まちづくりコンサルタントとして活動していましたが、その中で「コンサルタントはあくまでも『お手伝い』で、まちづくりの主体にはなれない」ことに気付きます。「自分自身が主体となってまちづくりに取り組むために、何かモノやサービスを提供する仕事をしたい」と考えた由利さんは、「お酒が好きだから、ビールを造ろう」と決意。独学で醸造方法を学び、2018年に浮島ブルーイングを立ち上げました。

浮島ブルーイングのオーナー、由利充翠さん

浮島ブルーイングのオーナー、由利充翠さん

 

由利さんは、まちづくりの手段に「ビール造り」を選んだ理由について、「そのまちにまだ存在しない、新しいサービスを自分が提供することで、まちがどんどん面白くなっていくんじゃないかと思った」と語ります。

「まちなかでビールを造るだけでなく、ビールを飲んでもらえるタップルーム(店舗)を開いて、そこで人と話したり、いろんなイベントを開催したりする。そうした取り組みを通じて、まちの活性化に寄与できればと思いました」


地元の常連さんから観光客まで、さまざまな人が訪れる浮島ブルーイングのタップルーム
地元の常連さんから観光客まで、さまざまな人が訪れるタップルーム。カウンターに立つ由利さんとの会話も弾みます

慣れ親しんだ浮島通りでブルワリーを開業

開業に向けて動き出した由利さんがビール造りの拠点に選んだのは、第一牧志公設市場近くの「浮島通り」エリア。由利さんは、大学院生の頃から長年この界隈に住んでおり、まちの人々とも親しく交流してきました。きっかけは大学4年生のとき、卒業論文のテーマに、浮島通りと隣接する「桜坂」を選んだことだったといいます。

「今はだいぶ変わっていますが、当時の桜坂は密集した木造建築が並ぶ繁華街で、その風景が非常に面白いと感じたんです。その後、大学院に上がったタイミングで浮島通りに住み始めました。最初は、浮島通りのことは何も知りませんでしたが、住んでみたら通り会のメンバーも面白い人達ばかりで、どんどんこのまちが好きになっていったんです。ビール造りを始めるときも、『この場所で造るなら』と思って『浮島ブルーイング』と名付けました」
 

国際通りから第一牧志公設市場方面に向かう浮島通り
国際通りから第一牧志公設市場方面に向かう浮島通り。通り沿いには個性的なアパレルショップや雑貨店、飲食店などが軒を連ねます

ビールの背景にある「物語」を伝えたい

浮島ブルーイングでは、ビールの醸造作業は材料選びからレシピ作成、仕込み、そして瓶詰めまで、すべて由利さんが一人で行っています。創業から7年以上たつ今も、ビール造りはトライ&エラーの連続だそうですが、「飲んだ方に『美味しい』と言ってもらえるのが何よりも嬉しい」と、研究開発に余念がありません。


手作業で行われるボトルのラベル貼り

ボトルのラベル貼りも、由利さんが1本ずつ手作業で行っています

 

そんな由利さんが、ビール造りで一番大切にしているのが「そのビールの背景にある『物語』を伝えること」です。浮島ブルーイングでは、さまざまな沖縄県産素材を使ったビールを醸造していますが、由利さんは店でビールを提供する際、そのビールがどういう経緯で生まれたのかについて、積極的に紹介するようにしているそうです。

「たとえばうちでは久高島の麦とか、仲村渠のモミ殻を使ったビールなども造っているんですが、そうした素材の後ろ側には必ず、それらを生産している人々の思いや、その地域の文化などが存在しているんですね。自分はそれを受け取ってビールを造って、その物語ごと飲んでくれる方に届けたい。沖縄には面白い素材がたくさんあって、それに関わっている方々もとても面白いので、その面白さが伝わるようなビールを造っていきたいと思っています」


カウンター内にあるビールの注ぎ口

カウンター内には8つのタップ(注ぎ口)があり、それぞれに物語を持つ8種類のビールが味わえます


南城市仲村渠で収穫した古代米のモミ殻
南城市仲村渠で収穫した古代米のモミ殻も、ビールの原料として利用されています

ビール造りを通じて出会いが生まれる

現在、由利さんは、浮島通りと市場中央通りが交わるエリア「水上店舗第二街区」の組合長も務めています。市場中央通り沿いには、第一牧志公設市場と向き合う形で「水上店舗」と呼ばれる建物が建っていますが(浮島ブルーイングのタップルームもこの中にあります)、こちらはもともと「ガーブ川」という水路があった上に、1963年に建てられた商業施設。現在は浮島ブルーイングのほか、土産物店や飲食店、衣料品店など、さまざまな店舗が入居しています。


市場中央通り沿い、公設市場の向かいに建つ建物が水上店舗
市場中央通り沿い、公設市場の向かいに建つ建物が水上店舗


水上店舗が建てられたのは、沖縄本土復帰前の1963年(沖縄県公文書館所蔵写真より)

水上店舗が建てられたのは、沖縄本土復帰前の1963年(沖縄県公文書館所蔵写真より)

 

由利さんはこの場所について、「戦後の那覇の都市形成史において、非常に意味がある建物」と感じ、地域の歴史をいろいろと調べたのだそう。その中で「沖縄の歴史をもっと深く学びたい」と思うようになり、4年前からは専門家を講師に招いて、年間24回の歴史講座「浮島講座」を毎年開講しています。

「浮島講座では1年間かけて、先史時代から現代に至るまでの間、沖縄がどのように変化していったのか、時系列に沿って詳しく学んでいきます。今年度で4年目に入りましたが、同じテーマでも講師の方が毎年違う話をしてくれるので、とても面白い。沖縄の歴史を学ぶことは、沖縄そのものを知ることにつながると感じています」


浮島講座は毎月第2・第4日曜の午前中に開催

浮島講座は毎月第2・第4日曜の午前中にタップルームで開催。18歳以下は無料で参加できます

 

現在、タップルームでは浮島講座のほかにも、音楽ライブやアート作品の展示会、結婚披露宴など、さまざまなイベントを行っています。由利さん曰く、「ただの飲み屋でもいいんですけど(笑)、引き出しはいろいろあるので、これからもこの場所での楽しみ方を広げていきたい」とのこと。由利さんが造るビールを通して生まれる、人と人とのウェルビーイングな出会いが、浮島通りというユニークなまちを、今後ますます活性化させていくことでしょう。


クラフトビールを片手に生演奏を楽しむ、浮島ブルーイングならではのひととき

クラフトビールを片手に生演奏を楽しむ、浮島ブルーイングならではのひとときです

浮島ブルーイング

住所 /
沖縄県那覇市牧志3-3-1 3F
TEL /
098-894-2636
E-Mail /
apolloberw@gmail.com
Webサイト /
https://www.ukishimabrewing.com/
営業時間 /
17:00~24:00(L.O.は閉店30分前)
定休日 /
水曜・木曜

沖縄CLIP編集部

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