森とともに暮らす喜び《坂尾菜都美》
森とともに暮らす喜び《坂尾菜都美》
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歴史文化
放送日:2025.06.16 ~2025.06.20
初回投稿日:2025.06.24
最終更新日:2025.06.24
最終更新日:2025.06.24
本島北部、名護市源河の深い森を進むと、源河川沿いにぽっかりと拓けた不思議な空間にたどり着きます。
ここは「Treeful Treehouse」が運営する「ツリーフル ツリーハウス サスティナブルリゾート」です。
ツリーハウスとは、木の幹や枝を利用して建てられる家や小屋のことで、自然との一体感を楽しめるとあって、近年アメリカを中心に、環境に配慮した持続可能なツリーハウスへの注目が高まっています。
このツリーハウスでビルダーとして働く坂尾菜都美さんは、幼い頃から自然を愛し、沖縄の野草レストランで働くことをきっかけに移住。レストランでの経験を通じて、植物への知識を深めていきました。
その後、Treeful Treehouseの代表である菊川曉さんと出会います。
「ツリーハウスでビルダーの仕事をやってみないか? とお誘いいただきました。大工仕事はまったくの初心者でしたが、DIYには昔から興味があり、手仕事も好きだったため、まずはボランティアとして訪れてみて驚きました。素晴らしい環境とやりがいのあるクリエイティブな仕事、何より自然を大切にし共存するというコンセプトにとても共感しました。気がついたらあっという間に7年が経っていました」
今では後輩たちの指導にもあたっているベテランビルダーの坂尾さん

セラピストの資格を持つ坂尾さんは、自然が人間に与える影響にもとても興味があるそうです
持続可能な取り組みへのこだわり
SDGs を目標に掲げるのは簡単ですが、実践するのはとても難しい。Treeful Treehouse では、環境への配慮が徹底していると坂尾さんは語ります。
「人間は地上部分をお借りしている」というコンセプトに基づいて、木の成長を考慮し、できるだけ細い枝も残した建築デザインを心がけています。
施工の際には、建物の高さを最低1.2m以上に設定し、微生物が生息し、植物が生育して、動物が通行できる環境を整えています。さらに、随所に隙間を設けることで、下層の植物にまで雨水が届き、光が差し込むようにしています。
また、草刈りには石油を使用する機械ではなくヤギを飼育し、自分たちで井戸を掘って水を確保し、ソーラーパネルで電力を賄っています。
「人が森に入ると、少なからず生態系に影響を与えてしまうと思いますが、なるべく最小限に抑えながら、という理念に共鳴して働ける職場です」と坂尾さんは語ります。
木は生きている限り成長するため、その成長に合わせたメンテナンスに終わりはありません。しかし、亜熱帯の森は湿度が高く、木材を腐食させてしまう危険もあります。そのため、自然の声に耳を傾けながら観察することが重要だと坂尾さんは話します。
「私は比較的飽きやすい性格で、ある程度仕事ができるようになると、次の新しいことに挑戦したくなるのですが、ツリーハウスは一つが完成しても、木が異なればデザインも変わるため、常に新鮮な気持ちで取り組むことができます。
年齢も経験も様々なビルダーチームで意見を出し合いながら、『どのようにしようか? どんな風に試してみようか?』と話し合いながら協働できることが、長く続けたいと思う理由かもしれません」
昔の人の知恵に学ぶ
さらに坂尾さんは、地元の高齢者の話なども聞いて、日々自然への感謝の気持ちを深めているそうです。
「昔の人は物を単に所有するのではなく、メンテナンスしながら長く使い続けていました。現代のように買って使わなくなったら捨てるという文化とは対極にあります。
特に沖縄の北部では、厳しい環境の中で植物が人々の生活のすべてでした。薬も衣服も道具も、すべて植物を使って生活していたのです。戦争体験者の話では、山に逃げた際に日陰ヘゴを食べて生き延びたという話も聞きました」
こうした聞き取りも坂尾さんのライフワークになりつつあります。
工具も握ったことはなかったという坂尾さんですが、今では繊細な加工もお手のもの
坂尾さんが最初に関わったツリーハウス。客室を貫くアカギがかっこいい
木の特性を生かした美しい回廊
2024年の北部地域における大雨被害は甚大で、源河川が大氾濫し、施設のサウナが流されてしまいました。自然と共存するとは、何が起こるかわからないという覚悟を持つことでもあります
うりずんの頃から秋口まで沖縄に飛来し、涼しげな鳴き声を響かせるアカショウビンの英語名「ハルシオン」と名付けられたツリーハウスは、鳥が羽を広げたようなデザインとなっています。
植物への情熱が生んだガイド業
昔から野草や山登りが好きな坂尾さんは、1年ほど前から本格的に植物について勉強を始めました。そして、学んだ知識を直接誰かに伝えたいという思いから、琉球草木散策と森林浴をガイドするGreen Daysを立ち上げました。
「野草を探す琉球草木散策では、平坦な道や家の周りにある身近な草木を題材に、民間で昔から使われていた知恵や食べ方、植物の持つ防御機能などについて話しながら歩きます。
森林浴について学んだ時に、自然に癒されるメカニズムや自然のエネルギーと人間の体感が交わる相乗効果の素晴らしさに感動したんです。
研究によると、人間の意識の部分ってとても重要で、癒しのメカニズムを理解した上で森に入ると、その効果は格段に高まることが分かっているようです。
そのため、私の森林浴プログラムでは約30分の事前説明から始まり、その後森に入ります。
普段外側ばかりに向いている意識を内側に向けて、五感をフルに活用していただきたいので、一人の時間も設けています」
琉球草木散策では、季節の植物や食べられる花などを実食します
おやつには、坂尾さん手作りの昔ながらのおやつ、アガラサー(黒糖蒸しパン)をいただきます
「最終的な目標は、自然を守りたいと思う人を一人でも多く増やすことです。好きなものは人に伝えたくなりますし、一緒に体験したくなります。好きなものがなくなったら悲しいし、その気持ちを大切に自然を守っていきたいと思ってもらえたら、うれしいですね」と、坂尾さんは、熱い思いで締めくくってくれました。
暮らしと生きる琉球草木散策/森林浴 Green Days
https://home.tsuku2.jp/storeDetail.php?scd=0000268356
https://www.instagram.com/greendays_okinawa/
坂尾菜都美
https://www.instagram.com/sakaonatsumi/
Treeful Treehouse
沖縄CLIP編集部
TVアーカイブ配信中
放送日:2025.06.16 ~ 2025.06.20
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