海の資源をおいしく活かす《トンナーラ オキナワ》
海の資源をおいしく活かす《トンナーラ オキナワ》
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歴史文化
放送日:2026.03.23 ~2026.03.27
初回投稿日:2026.04.03
最終更新日:2026.04.03
最終更新日:2026.04.03
目次
捨てられているマグロの卵巣を活かしたい
日本でも有数のマグロ産地として知られる沖縄。4~5月に旬を迎える本マグロ(クロマグロ)のほか、キハダ、メバチ、ビンナガと計4種類のマグロが水揚げされており、年間を通して生のマグロを味わうことができます。
ただ、そうしたマグロが余すところなく利用されているかというと、必ずしもそうではありません。刺身として食される部位以外(内臓など)は販路がないため、そのほとんどが水揚げ後に廃棄されているのが現状です。
そうした「もったいない状況」をなんとかしたいと動き出したのが、那覇市でイタリア料理店「BACAR OKINAWA(バカール オキナワ)」を営むピッツァ職人の仲村大輔さんと、姉妹店「TAMUZZA.OKINAWA(タムッツア オキナワ)」のシェフ、玉城絵利子さんです。二人は現在「TONNARA OKINAWA(トンナーラ オキナワ)」というブランドを立ち上げ、県産マグロの卵巣を使ったボッタルガ(カラスミ)をはじめ、沖縄の「もったいない」海洋資源を商品化し、消費拡大につなげる取り組みを進めています。

那覇市若狭にあるトンナーラ オキナワの加工場で、県産マグロのボッタルガが製造されています
シチリアの記憶が、沖縄で花開く
ボッタルガとは、魚の卵巣を塩漬けにして乾燥・熟成させた保存食で、一般的には「カラスミ」の名で親しまれています。日本ではボラの卵巣を使ったカラスミが主流ですが、イタリアのシチリアでは、古くからクロマグロを使ってボッタルガを作る文化があります。
玉城さんはかつて、シチリアで料理修業をした経験を持ちます。帰国後、那覇の漁港でマグロの卵巣が捨てられているのを目にしたとき、シチリアでの光景がよみがえりました。
「もったいない。シチリアではこれでボッタルガを作っていたじゃないか」。
その思いが、このプロジェクトの出発点です。

バカールの姉妹店であるタムッツァのシェフ、玉城さん
そして仲村さんも、玉城さんと一緒にシチリアを訪れた際、ボッタルガの魅力に魅了されたと振り返ります。
「本マグロのボッタルガを初めて食べたとき、ボラとはまったく違う、力強いコクとうまみに驚きました。沖縄ではマグロの卵巣が捨てられているのを知って、これを無駄にしたくない、どうしても活用したいと思いました」

バカールのオーナーで、トンナーラ オキナワ代表を務める仲村さん
当時バカールでシェフを務めていた玉城さんは、本マグロの卵巣を使ってボッタルガの試作を開始しました。最初は少量から作り始め、バカールでボッタルガを使った料理を提供していましたが、その評判が良かったこともあり、約2年前に仲村さんと相談して「本格的な商品化に取り組もう」と決断。港に近い若狭の地に自社ビルを構えたことを機に、ビル内に姉妹店「タムッツァ」を開くとともに加工場を立ち上げ、ボッタルガの製造に乗り出しました。
1年以上かけて沖縄の素材で仕上げる
マグロの卵巣を使ったボッタルガづくりには、年単位の時間がかかります。まず、仕入れた卵巣を血抜き・水抜きして塩漬けし、1年以上かけてじっくりと熟成させます。熟成後は塩分濃度を変えながら塩抜きを行い、県産の日本酒に漬け込んでからプレス。その後は専用の乾燥機の中で、泡盛を塗りながら乾燥させる⇒休ませるを繰り返し、約3週間から1ヶ月半ほどでようやく完成となります。

本マグロの卵巣を塩や酒で漬け込み、熟成させていきます。加工に使う塩や酒も沖縄産にこだわっており、塩は糸満の沖合2000mから汲み上げた100%海水のみの塩を使用しています
また、マグロの卵巣は大きさも脂ののりも一つ一つ違うため、塩分濃度や乾燥時間の調整が難しく、安定した味に仕上げられるようになるまでは、試行錯誤の連続だったそう。さらに、本マグロの漁期は4月下旬からわずか1か月半ほどと短く、素材の卵巣はすべてこの期間中に確保しなければなりません。漁期の最中は毎日のように漁協と連絡を取り合い、「今日は水揚げがありそうだ」と聞けば港に駆けつける、という日々が続きます。

本マグロ(右側)以外に、他の種類のマグロ(左側はメバチ)の卵巣でもボッタルガを作っています。「やはり捨てるのはもったいないので、使えるところはなるべく使いたいと思って」と玉城さん
食のプロたちが真剣に「おいしい」を追う
そうして生まれた沖縄ならではのボッタルガは、タムッツァやバカールのメニューの一品として味わうことができます。たとえばタムッツァでは、おまかせコースの最初の一皿として、バターたっぷりのブリオッシュに県産タンカンのジャムと発酵バターを添え、本マグロのボッタルガをたっぷりとかけた一皿を提供しており、顧客からも高い評価を得ています。

ボッタルガを使った料理は、玉城さんにとって「名刺代わりの一皿」だそう
また、同店では両店のシェフたちによる試食会も行っており、ボッタルガやボッタルガを使った料理について、率直な意見が交わされます。作り手たちの真剣な姿勢が、このボッタルガの品質を支えているのです。

ボッタルガのパスタを試食した仲村さんは「今の状態でもおいしいけれど、まだまだブラッシュアップしたい。ものづくりとはそういうことだから、よりいいものを目指していきましょう」と提案していました
廃棄される海洋資源に新しい価値を
トンナーラ オキナワでは今、次の「もったいないを活かす」挑戦として、ソデイカの「ゲソ」の活用に取り組んでいます。沖縄はソデイカの水揚げ量が全国1位ですが、その多くは洋上で捨てられています。仕入れ値が安いゲソは、漁船に積んで港まで運んでも燃料代に見合わないため、船には高く売れる「身」だけを積み、ゲソは船上のスペースを空けるために捨ててしまうのです。

大型のソデイカはゲソも大きく、船上でスペースを取るため廃棄されているそう
「料理人としては、旨味が強いゲソこそ料理に使いたい部位。これを『おいしい商品』に変えることができれば、漁師さんが船に積んで港に持ち帰っても適正な価格で買い取ることができて、いい循環が生まれるはず」と、仲村さんは見込んでいます。現在は、カレーやパスタソースなど手軽に食べられる商品の開発を進めており、OEM(外注生産)も活用しながらの商品化を目指しています。

ソデイカのイカスミを使ったパスタ。シェフたちがアイディアを出し合い、試作を繰り返しています
この取り組みには、沖縄県漁業士会も全面的に協力しています。会長の城間清国さんは「僕らが苦手な商品開発の部分を仲村さんたちが担ってくれて、とてもありがたいし、一緒にやれてとても楽しいです」と喜びます。

沖縄県漁業士会の会長、城間さん
「僕らの次の世代、またその次の世代まで沖縄の漁業という仕事を残すこと、そしてみんながしっかり稼げる環境を作ることが、僕らの課題だと思っています。その中で仲村さんたちと一緒に、こうした取り組みができることにはワクワクしますし、もっと何かできることはないかな?って考えています」
三方良しの循環が沖縄の未来をつくる
こうしたトンナーラ オキナワの挑戦は、バカールやタムッツァのファンの間でも大きな反響を呼びました。2023年秋に加工場づくりの資金調達を目的としたクラウドファンディングを立ち上げたところ、目標金額の800万円を1週間で達成し、最終的には1,200万円を超える支援が集まりました。多くの人が、この取り組みの意義に共感した証といえるでしょう。仲村さんが、その活動の根底にある理念を教えてくれました。
「僕らが力を合わせてチャレンジすることで、今まで無駄になっていた海洋資源から新しい価値を生み出して、漁師さんも、お客さんも、お店も、みんながウィンウィンになる形を作っていきたい。三方良しでなければ、仕事は続けていけませんから」

ボッタルガはトンナーラ オキナワのECサイトでも販売しており、取り寄せて家庭で楽しむこともできます。玉城さん曰く「ペペロンチーノに入れたり、目玉焼きにそのままかけたり、沖縄料理ならそうめんたしやーに混ぜるのもおいしいですよ」とのこと
廃棄されていた「もったいない」素材に光を当て、それを「おいしさ」という価値に変え、生産者と作り手と消費者が、ともに豊かになる循環をつくること。そこにトンナーラ オキナワが目指す、ウェルビーイングな未来があります。
TONNARA OKINAWA(トンナーラ オキナワ)
TAMUZZA.OKINAWA(タムッツァ オキナワ)
住所/沖縄県那覇市若狭2-7-2
TEL/070-5274-0888
Webサイト/https://www.instagram.com/tamuzza.okinawa/
BACAR OKINAWA(バカール オキナワ)
住所/沖縄県那覇市久茂地3-16-15
TEL/098-863-5678
沖縄CLIP編集部
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