リハビリ・食事で元気につながる《デイサービス すんじゃ》
リハビリ・食事で元気につながる《デイサービス すんじゃ》
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歴史文化
放送日:2025.07.21 ~2025.07.25
初回投稿日:2025.07.29
最終更新日:2025.07.29
最終更新日:2025.07.29
デイサービスすんじゃとは

白い外観が目をひくすんじゃ。穏やかな高齢者のイラストが目印です
糸満市潮平にある「すんじゃ」は、理学療法士の中本聖さんと作業療法士の由香さんご夫婦が運営する、リハビリに特化したデイサービス(通所介護)です。
デイサービスとは、日本の介護保険制度に基づくサービスで、高齢者が日中の施設で、介護や生活支援、機能訓練、レクリエーションなどを受けることができます。
すんじゃの代表を務める聖さんは、長年総合病院で勤務する中で、体調不良で入院した患者が、リハビリを経て元気に退院するにも関わらず、半年後や1年後に再び同じような症状で戻ってくる光景を目にするたびに、不調の原因に向き合えないもどかしさを感じていました。
心臓リハビリテーションとの出会いが転機に
転機となったのは、院内で心臓リハビリテーション部署の立ち上げに携わったことでした。心臓リハビリテーション指導士の資格も取得し、地域の外来患者への運動や栄養、服薬指導などの総合的なアプローチを経験する中で、患者を入院させずに予防するにはどうしたらよいか?という視点を持つようになります。
そして、より地域とのつながりを深め、健康寿命の延伸に貢献したいという思いが強くなりました。
個別リハビリでの何気ない会話の中に、生活習慣改善のヒントが隠されていることもあります
作業療法士由香さんの気づき
一方、作業療法士の由香さんは病院で臨床経験を積んだ後、観光業に従事し、その後、ワーキングホリデーでニュージーランドへ渡りました。ニュージーランドでは、人々の自然環境への意識の高さや自給を楽しむ暮らしに感銘を受けました。
こうした多様な経験が、後のデイサービス運営で「その人らしさを大切にする」サービスの基盤となりました。
利用者さんたちの「らしさ」を大切に、すんじゃに取り組むご夫婦
夫婦で目指すデイサービス
その後、ご夫婦は同じデイサービスで経験を重ね、その事業所を受け継ぐ形で独立し、2025年5月に二つ目の施設となる、リハビリと腸活をコンセプトとした「すんじゃ」を立ち上げました。
すんじゃとは、事業所のある潮平の方言読みです。
すんじゃを開設するにあたり、聖さんは、三つの目標を掲げました。
体の運動とレクリエーションを組み合わせたプログラムを取り入れています
〈一つめは環境づくり〉
足腰が弱り、車の運転ができない高齢者の場合、外出の機会が少なく、家に孤立してしまう現状があります。家にこもると活力が低下するため、まずは外出のきっかけを作ることが重要です。「すんじゃ」は楽しく安心できる場所、人と人とがつながれるコミュニティの場でありたいと考え、利用者同士のコミュニケーションが取れる雰囲気や環境づくりに努めています。活動範囲の拡大は、認知症リスクの軽減にもつながるといわれています。
〈二つめは健康維持〉
理学療法士としての専門性を活かし、運動やリハビリに力を入れて身体の健康度の向上を目指しています。1日3回の集団体操やレクリエーション、個別リハビリを実施し、あえて昼寝時間を設けることなく、自宅で十分に休息できる1日のリズムを作ります。これによって正しい生活パターンが確立され、身体の運動と頭の体操を組み合わせた包括的なアプローチを実践しています。
〈三つめは食事と腸活〉
食事や腸活を通じて体の内側からの健康を重視し、発酵食品を活用した取り組みを行っています。
若い頃の記憶は心の刺激にとてもよいそう
腸活担当 由香さんの思い
沖縄の平均寿命が全国1位から最下位レベルにまで転落した現在、由香さんは利用者の世代差に注目します。
「80歳以上の方はわりと足腰が丈夫なんですよ。でも、60代から70代の方は、基礎疾患をお持ちの方が多いように感じます。聞き取りをすると、80歳以上の方は、昔から体を動かしたり農作業をして、地元の野菜を食べていた、地域のコミュニティがあったなど、さまざまな特徴が見えてきたんです。
これは沖縄の、特にやんばる地域が、ブルーゾーンとして注目される昔ながらの暮らし方にヒントがあるんじゃないでしょうか? ニュージーランドの人たちの暮らし方にも通じるものがありました」と由香さんは語ります。
由香さんが担当する食事では、手作り味噌を使った味噌汁や土鍋で炊いた温かいご飯を提供し、季節の発酵食品作り(味噌、梅干し、キムチなど)もリハビリの一環として積極的に取り入れていく予定です。
昔の記憶を呼び戻すこうした作業は、利用者の皆さんにとってよい刺激になっているようだと由香さんは話します。
「利用者さんとあたいぐわー(庭の小さな畑)で育てた野菜を、今後は皆さんの食事で提供したい」と由香さんは話します

毎食の食事では、土鍋で炊いたおいしいご飯を提供します

みんなで味噌も仕込みました。リハビリも兼ねて今後のプログラムの一つにしていく予定です
介護業界の魅力を発信
また、聖さんは、同世代から親の介護相談を受ける機会も増えており、「介護の当事者になった時に焦ることがないように、みんなが事前に準備や心構えができたらいいなと思っています」と話します。
さらに、働く場として、介護業界の認知度の拡大も目標に掲げています。
介護職は情報が見えにくく、仕事がきついというイメージが先行しているためか、なかなか人が集まらない業界ですが、営業時間外のすんじゃを開放し、イベントなどを開催して、介護の現場を知ってもらう機会も設けています。
デイサービスの休館日に、地域の人向けに開催している糸満地域の伝統的な発酵飲料「ミキ」のワークショップ。「参加する方やデイサービスの利用者さんから学ばせていただくことが多い」と由香さん
※ミキとは米や麦、サツマイモなどを原料に、乳酸菌で発酵させた奄美・沖縄地方の発酵飲料のこと。伝統を重んじる糸満では、昔から神事や祭りで振る舞われてきました
「食事、運動、つながりを大切にしながら、よりその人らしく、元気に生きられるようなサポートができればと思います」と、お二人は話します。
夫婦の挑戦は、高齢化社会における新しい介護の形。一人ひとりに寄り添ったサービスが、確実に地域の健康寿命の延伸に貢献していくことでしょう。
デイサービス すんじゃ
- 住所 /
- 沖縄県糸満市潮平787-5
- TEL /
- 098-995-8690
沖縄CLIP編集部
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