琉球芸能に魅せられて《富田めぐみ》

琉球芸能に魅せられて《富田めぐみ》

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歴史文化

放送日:2026.01.12 ~2026.01.16

初回投稿日:2026.01.20
 最終更新日:2026.01.20

最終更新日:2026.01.20

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琉球芸能の素晴らしさを広めたい

富田めぐみさんは、沖縄で長年にわたり、舞台公演の脚本・演出・プロデュース・コーディネート等を手がけてきた舞台演出家です。


舞台演出家として、さまざまな舞台公演に携わる富田めぐみさん

舞台演出家として、さまざまな舞台公演に携わる富田めぐみさん

 

もともとはラジオパーソナリティやレポーター、女優など、自身が表に出る形で芸能活動を行っていましたが、次第に組踊や琉球舞踊、民謡、地域芸能など「沖縄の伝統芸能の素晴らしさ」に目覚め、その活動を「裏方として支えたい」と思うようになり、舞台演出家としても活動するようになりました。

「伝統芸能はそのままでとても美しいのだから、その形は壊さず守りつつ、初体験の人でも楽しめるように演出を工夫して、より多くの人に芸能体験を楽しんでもらいたい」との思いをもとに、これまでに多数のオリジナル作品を創作。現在は県内のみならず、県外や海外でも多数の公演を行っており、その作品は文化庁芸術祭で賞を獲得するなど、高い評価を得ています。


富田さんのオリジナル作品『五月九月(ぐんぐゎちくんぐゎち)』は、2019年の東京公演で文化庁芸術祭大賞(大賞芸能部門)を受賞。南米でも上演
富田さんのオリジナル作品『五月九月(ぐんぐゎちくんぐゎち)』は、2019年の東京公演で文化庁芸術祭大賞(大賞芸能部門)を受賞。南米でも上演されました

「芸歴10年以上」の高校生との出会いから演出家の道へ

高校在学中にラジオパーソナリティとしてデビューし、表舞台で活躍していた富田さんが伝統芸能の演出に取り組むきっかけとなったのは、知り合いの舞台プロデューサーから誘いを受け、南風原高校郷土芸能コースの生徒たちも出演する舞台で演出助手を務めたことでした。


ラジオのパーソナリティをはじめ、テレビやCM、映画、ドラマなどで人気を得ていた富田さん
ラジオのパーソナリティをはじめ、テレビやCM、映画、ドラマなどで人気を得ていた富田さん。演出助手の経験を機に、演出家への道を歩み始めます

 

富田さんは彼らとの創作に参加して、その実力と志の高さに衝撃を受けました。

「郷土芸能コースで学ぶ生徒たちは、みんな物心ついたときから琉球舞踊を踊ったり、歌三線を習ったりしていて、身体の中に芸能が染みこんでいるような、本当にすごい子ばかりなんです。私は彼らに『このシーン、つまらないから書き直して』とか言われて、怒られてばっかりでしたけど(笑)、そこで琉球芸能の魅力を教えてもらいました。あの出会いがなかったら、今の私はいなかったと思います」

 

舞台演出家として、さまざまな舞台公演に携わる富田めぐみさん
10代で「芸歴10年以上」の生徒たちと出会い、富田さんの人生は大きく変わりました

 

そのとき、プロデューサーから「沖縄は表舞台に立つ人は多いけど、裏方が足りない」と聞いた富田さん。その後も演出の仕事に関わる中で、「これは自分の性に合っているかも」と考えるようになりました。

「私は自分が表に出るより、舞台に立つプレイヤーを裏から支えて『がんばれ』と背中を押すほうが向いている、と気付いたんです。それ以来、裏方として舞台づくりを支える仕事にやりがいを感じるようになりました。素晴らしい才能を持った人が、華やかな舞台で輝く姿を見ると、本当に嬉しい。私には特別な才能があるわけじゃないけど、『場』を作る人がいないと舞台は成立しないので、それが私の役割だと思っています。作品の演出に携わるたび、『こんなに豊かな文化に囲まれて舞台作りができるのは、なんて幸せなことなんだろう』と実感します」


仕事の中には舞台の演出だけでなく、出演者の送迎や食事の手配など、細かな雑務もこなす富田めぐみさん
仕事の中には舞台の演出だけでなく、出演者の送迎や食事の手配など、細かな雑務も含まれるそう。「演出家といいつつ、実態は“なんでも屋”ですね(笑)」

地域芸能に囲まれて育った幼少期

富田さんと琉球芸能との最初の出合いは、幼少期に遡ります。

富田さんが生まれ育ったのは、綱引きや棒術、唐人行列・大和行列など、地域芸能が盛んな八重瀬町富盛地区。子どもの頃は半ば強制的に芸能活動に参加させられており、当時はあまり興味を持てなかったそうですが、成長するにつれその魅力に改めて気付き、琉球舞踊を学ぶようになりました。


沖縄県内で最大・最古といわれる石獅子(シーサー)と並ぶ女性

富田さんの故郷である八重瀬町富盛地区には、県内で最大・最古といわれる石獅子(シーサー)があります。「富盛で一番の有名人ですね(笑)。うちはノロの家系なので、今は亡き祖母と一緒に、ときどき拝みに来ていました」


地域芸能に参加する女性
物心ついた頃から参加していた地域芸能が、富田さんの活動の原点にあります
 

富田さんは沖縄の歌や踊りについて、「それ自体が平和のかたちであり、今の時代にこそ世界と共有したい、沖縄からのメッセージだ」と感じているそうです。

「私が長年、琉球芸能に関わってきて思うのは、『琉球』という国はもう存在しないけれど、歌や踊りを続けている限り、そこに『琉球』は生きている、ということです。舞台の上では、確かに『琉球』が存在していて、それはつまり『国はなくなっても文化があれば、心の中に国を持ち続けることができる』ということ。戦争は『国』を守るために起こりますが、『国』が文化や心の中にあれば、他国と争わなくても守ることができる。それは誰にも奪えないものですから」

仲間たちから寄せられる信頼と尊敬

芸能公演の企画・演出はもとより、脚本執筆や舞台解説、海外公演のコーディネートなど、さまざまな活動に全力で取り組んできた富田さん。その仕事ぶりは、沖縄で琉球芸能に携わる多くの人々からも絶大な信頼を得ています。

そのうちの一人が、富田さんと同じ八重瀬町出身の実演家で、沖縄県立芸術大学沖縄文化コースの講師も務める神谷武史さん。富田さんとは、これまでに何度も一緒に舞台を作り上げてきた、いわば同志ともいえる仲です。神谷さんは「ラジオパーソナリティやイベント司会などの経験も豊富なめぐみさんは、『話す』専門家でもあるので、芸能の魅力を言葉でもしっかりと伝えてくれる。互いにかけがえのない存在として、これからもぜひ一緒に琉球芸能を盛り上げていきたい」と語ります。


神谷さんは、勇壮な獅子舞で知られる八重瀬町志多伯地区の出身

神谷さんは、勇壮な獅子舞で知られる八重瀬町志多伯地区の出身。富田さんとは高校時代から知己の仲だそう

 

また、富田さんの活動は若手の実演家やスタッフにとっても大きな指針となっています。


2025年末に富田さんが演出を手がけた公演で、自らも出演しながら演出助手を務めた高里風花さん

2025年末に富田さんが演出を手がけた公演で、自らも出演しながら演出助手を務めた高里風花さん。富田さんの演出手腕について「アイデアがポンポン出てくるだけでなく、それを形にできる力があるのがすごい」と語ります


富田さんの舞台に数多く出演し、音楽監督も務める演奏家の與那國太介さん
富田さんの舞台に数多く出演し、音楽監督も務める演奏家の與那國太介さん。「めぐみさんは『どういう演出をすれば出演者を活かせるか』を客観的に見ていて、僕らが何か提案すると決して『ノー』とは言わず、『なるほど』と取り入れてくれる。とても尊敬できる方です」

琉球芸能には世界とつながる力がある

富田さんは将来的な琉球芸能の可能性について、「世界とつながる力がある」と考えています。「琉球芸能に込められた喜怒哀楽は、人々の営みや感情から生まれてくる普遍的なもので、嘘がない。だから世界のどの地域に持っていっても通用すると思います」

実際、これまで富田さんはヨーロッパやアフリカ、南米、アジアなど、世界各地で琉球芸能公演を行ってきましたが、どの国でも客席からは大きな拍手や歓声が上がり、「喜んでもらえた」という実感があったそう。今後、さらに多くの国や地域に琉球芸能を届けることが、富田さんの目標の一つとなっています。


琉球芸能イギリスツアーの記念写真
琉球芸能イギリスツアーの記念写真

ペルーでの琉球舞踊ワークショップのようす

ペルーでの琉球舞踊ワークショップのようす

 

「私はいま52歳ですが、少なくとも還暦までは舞台演出家として、全力で走り抜けたいと思っています。やりかけのプロジェクトもたくさんあるので、それを一つずつ形にしていきたい。その後は成長した若手の舞台を見ながら、『よしよし』と応援する立場になれたらいいですね」

沖縄から世界へ、芸能の魅力を伝える富田さん。その活動から、琉球芸能のウェルビーイングな未来が見えてきます。

 

琉球芸能大使館(代表・富田めぐみ)

Webサイト/
https://ryukyu-embassy.wixsite.com/mysite/home

沖縄CLIP編集部

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