心と体に寄り添うメソッド ベースボールピラティス《上原綾乃》
心と体に寄り添うメソッド ベースボールピラティス《上原綾乃》
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歴史文化
放送日:2025.11.24 ~2025.11.28
初回投稿日:2025.12.04
最終更新日:2025.12.04
最終更新日:2025.12.04
宜野湾市長田のトレーニングスタジオを拠点に、自身が考案した「ベースボールピラティス」のトレーナーとして活動する上原綾乃さん。現在は、県内外の野球チームや県内高校で指導にあたっています。
目次
ベースボールピラティスとは?

ベースボールピラティスの考案者、上原綾乃さん
ベースボールピラティスとは、文字通り、野球とピラティスを組み合わせた造語です。
体幹を中心に全身の筋肉をバランスよく鍛え、柔軟性の向上や体幹強化を目的とするピラティスに、野球選手に必要な骨格調整を組み合わせたメソッドで、若手選手のケガ予防やパフォーマンス向上に寄与しています。
陸上選手から、体を支える側へ
上原さんは中学時代に陸上競技を始め、高校でも選手として活動しましたが、膝や足の故障に悩まされました。当時のケアといえば、整骨院でテーピングを巻いてもらう程度。
「もっと根本的なケアはできないのか?」。その思いが、専門学校でスポーツ科学を選択する大きなきっかけになりました。授業でエアロビクスと出合い、「体を動かすことで人の健康を支えたい」という想いが芽生えます。
専門学校時代には、那覇マラソンや沖縄マラソンのランナーへのアフターケアにボランティアとして参加。スポーツアロマやオイルケアも学び、経験を広げていきました。
ピラティスとの出合い
専門学校卒業後は、意外にも美容の道へ進みました。その後、結婚・出産を経て二人の息子を育てながらも、体への興味は消えることがありませんでした。
転機が訪れたのは24、5歳の頃。イギリスでカリスマ的なアーティストがピラティスを実践していることを知り、美しさとキレのあるパフォーマンスの秘訣はピラティスにあると確信します。しかし、当時の日本ではまだ情報が少なく、限られた情報を頼りに、独学で体幹トレーニングやストレッチを続ける日々でした。
やがて息子たちが野球を始めると、専門学校で学んだトリートメントを実践。長男が高校で県外に進学した際、ケガが続いたという話を聞き、目の前でケアできないことにもどかしさを覚えました。
「しっかりとした予防ケアがあれば、ケガは防げるはず」。その思いが、上原さんを本格的なピラティス資格取得へと駆り立てました。
コロナ禍世代の子どもたちに、必要なもの
県内外でピラティスを学び、骨格コンディショニングの資格も習得して活動を始めた上原さん。現場でまず痛感したのは、子どもたちのケガの多さでした。
「コロナ禍で外出を制限されて育った小学校低学年の世代が、今まさに中学生から高校生になっていますが、基礎身体能力の低下がケガの増加につながっています」
マット運動のように、脳と体をつなぐ動きを取り入れることがケガの防止に役立ち、さらに骨盤や肩の位置を正しく整えることで、投球フォームも安定するのだそうです。
こうした気づきの積み重ねから、「ベースボールピラティス」が生まれました。

ベースボールピラティスでは、体をあらゆる方向に回転させて可動域を広げます

手首の可動域を広げると、ボールが投げやすくなります

「体を正しく使うことで、子どもたちが楽しくプレイできることを願っています」と上原さん
ピラティスの可能性
上原さんは自身のスタジオでのマンツーマン指導に加え、浦添市のクラブチーム「沖縄スカイワン」、那覇商業高校野球部の朝練、エナジックスポーツ高等学院、那覇商業高校でベースボールピラティスを指導。さらに嘉手納高校では、体育の授業としてピラティスを教えています。
野球部員には、背骨を多方向に動かす3Dの動きや、遠心力を活かしたトレーニングを取り入れています。
「一見不思議な動きだけど、骨本来の動きだから体がスムーズに動きます」、「使ったことのない筋肉を意識するのが楽しい」、選手たちからは、そんな実感のこもった声が返ってきます。
監督も変化を実感しています。「過去のフォーム動画と現在を比較すると、その差は歴然。中学時代と高校では動きがまったく異なり、骨盤の位置が整ったことで球速もアップしています。昔のように筋肉だけ鍛えれば良いわけではないと気づかされます。子どもたちの体が明らかに変わってきました」。
呼吸と集中。心の変化に気が付く
ピラティスで大切なのは呼吸。集中して自分の体と向き合う時間です。
「動作を見れば、子どもに悩みがあるのか、心が落ち着いていないのか、内面の変化が伝わってくるんです」と上原さん。
「フォームが大幅に改善され、子どものメンタルの変化も把握しやすくなりました」と、指導者たちも、上原さんの洞察力に信頼を寄せています。

嘉手納高校の体育の授業にもピラティスを導入しています

体を整える大切さを子どもたちに伝え、子どもたちも自分の体の変化を楽しんでいます

体に負荷をかけないようクッション性の高い人工芝を敷き詰めたスタジオで、親子のコンディショニング教室
家庭でできるボディメンテナンス
最近、上原さんが力を入れているのが親子コンディショニング教室。お母さんに、子どもの体のメンテナンス方法を伝える取り組みです。
「週に1回スタジオに来るより、毎日5分でもお母さんが子どもに触れてあげる方が効果的なんです」
中学生になっても、親子で触れる習慣を続けると、「今日やってないから、やろう」と、子どもから声がかかるようになったと話すお母さんもいます。
「使ったら休ませることも大事だと知りました」。子どもたちの体に対する意識も変わっていきます。
80歳まで元気な現役でいるために
目指すのは、80歳まで野球部と一緒にピラティスを続けること。
「子どもたちの微細な変化に気づくためにも、まずは自分が元気で整っていないといけない。子どもたちのプロ野球選手になりたいという夢に近づけるように、ケガなく長く選手生命を全うできるように後押ししたい。この思いが私の原動力です」と上原さん。
上原さんの「ベースボールピラティス」は、沖縄から全国へ、新しいトレーニングの形を発信し続けています。
沖縄CLIP編集部
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