日常の暮らしこそ宝物≪沖縄郷時間≫
日常の暮らしこそ宝物≪沖縄郷時間≫
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歴史文化
放送日:2025.09.15 ~2025.09.19
初回投稿日:2025.09.24
最終更新日:2025.09.24
最終更新日:2025.09.24
目次
北部の久志地域で日常の暮らしを体験
名護市の東海岸、久志(くし)地域は、昔ながらの沖縄の景色と暮らしが残る場所。集落の人たちは、地域に根付く伝統を大切に、豊かな自然と共存しながら暮らしています。そんな魅力的な日常の暮らしを、観光で訪れた人たちにも体験してほしいと考案されたのが観光アクティビティ「沖縄郷(さと)時間」です。
天仁屋区の人たちの交流の場となっている朝のラジオ体操
企画・運営を手がけるのは、「ホット沖縄総合研究所」(以下ホット総研)。久志には、約30年前に地域活性化を目指して開業したホテル「カヌチャリゾート」があります。「ホット総研」は「カヌチャリゾート」のグループ会社。ホテルが開業当時から掲げてきた地域との連携について、改めて何か良いプランを立てられないかと模索してきました。
「久志には沖縄の原風景が残っている」と語る「ホット総研」の白石亮博さん
企画の立案から担当した「ホット総研」の翁長愛音さん、上原由姫子さんは、始めに久志地域の集落の人たちにお話を聞いて回りました。そこで感じたのは、日常の暮らしそのものに魅力があるということ。
「那覇に住んでいたら気づけないような古き良き沖縄を体現しながら過ごされていると感じました。一人ひとりが個性的で、暮らし自体がすごく魅力的。なので、特別なことをせず、この日常の暮らしを提供する観光のアクティビティを考えてみようと。この暮らしがずっと残ってほしい、小さな力だけどそのために私たちができることをしたいと考えました」
「ホット総研」の上原由姫子さん(左)と翁長愛音さん
ふだんどおり、いつものままでお願いします。そう言って、久志地域の皆さんにアクティビティの説明をしてみると、「お金を出して、ふだんの暮らしを体験したいという人がいるの?」という意見も。
「皆さんにとってはふつうでも、私たちから見ると特別なんです、宝物のようなんですとお伝えしました。久志地域は観光地じゃないからこその魅力がある。だから何もしないでください、長く続けられるように頑張らないでください、と。そこから賛同してくださった9人のローカルパートナー(地域住民)さんと9つのツアープランが誕生しました」
久志地域の魅力を伝える「沖縄郷時間」ブースが「カヌチャリゾート」内に設置されている
ツアー内容は、「あたいぐゎ農家」の畑体験、集落散歩やホラ貝吹き体験、藍染体験、ラジオ体操、地域の植物でものづくりなど、多種多彩。2024年にモニターツアーを行い、今秋には、いよいよ本格的に体験参加者の募集がスタートします。
地元の人たちの協力で形になった「沖縄郷時間」
「沖縄郷時間」を実現するには、地元の人たちの協力が必須。その思いで、まず翁長さんと上原さんが連携依頼をしたのが、地域の人たちと確かな信頼関係を築いている「わんさか大浦パーク」の大城光長さんと、「NPO法人久志地域観光交流協会」の江利川法孝さんでした。お二人は、ローカルパートナーの人選を始め、ツアー実施までの調整、当日の同行などを、共同運営という形で協力してくださることに。
集落を散策する「ホット総研」の翁長さん、上原さんと、「NPO法人久志地域観光交流協会」の江利川さん、「わんさか大浦パーク」の大城さん
「私はここで生まれ育ったので顔見知りの人ばかりですし、地元の人が立ち寄る施設で働いているので、日々地域の方々と会話をしています。その中で感じていたのは、久志は地元の人たちが観光に関わる機会が少ない地域だということ。でも、今回の『沖縄郷時間』は、日常そのままの暮らしを商品にするということで、これまで観光に関われなかった人も関われる可能性が出てきて、いろんな人を巻き込めるかもしれないととても魅力的に感じました」(大城さん)
「沖縄郷時間」のチームとして定期的に集い、打ち合わせを行っている
「自分たちの地元に誇りを持って、地域を盛り上げたいという志を持った方々はたくさんいらっしゃるんですが、皆さんが無理することなく、それでいてそれぞれの個性を活かした観光プランを実現するにはどうしたらよいのか考えていました。『沖縄郷時間』のコンセプトだと、民泊の受け入れはできないけど、日帰りツアーだったらできるという人も出てきたりして、地域のニーズとマッチしたいろいろな人が活躍できるプランだなと感じました。着飾らない素の久志地域を見て頂くことが地域のためになると思いますし、観光客の方にも“田舎が田舎である魅力”をより感じて頂ける機会になるんじゃないかなと思います」(江利川さん)
「NPO法人久志地域観光交流協会」の江利川さん(左)と「わんさか大浦パーク」の大城さん
さらに、地元の人にとっては「楽しみにしてくれている人がいる、地域を支えてくれる人がいる」と、日々の刺激や生きがいにつながることもあるのでは。観光客と地元の人との間で、そんな良い相互関係が生まれることも、お二人は期待しています。
大川区で元寿司職人と一緒に過ごす癒しの時間
大川区のローカルパートナーは、名護市で36年愛されたお寿司屋さんを引退後、地元に戻り「あたいぐゎ農家」として、新たな生活をスタートした澤岻(たくし)安英さん。「あたいぐゎ」とは沖縄の方言で、家の庭で作る小さな畑のこと。
澤岻さんの庭で育ったおいしいシークヮーサー
澤岻さんの庭で出会えるのは、青々とした実が輝くシークヮーサーの木々、季節ごとの島野菜や果物、そして鮮やかな花々と蝶々。
大川区のローカルパートナー澤岻安英さん
「長い間、地元を離れて仕事をしてきたので、引退後は何か地域に恩返しができたらと思っていました。ここに住む自分たちだけで楽しむのではなく、たくさんの人にこの豊かな自然の魅力を味わって頂いて、ぜひ癒しの時間を楽しんで頂きたいです」と、澤岻さん。
シークヮーサーの上手な収穫の方法を上原さんにレクチャーする澤岻さん
ツアーでは、シークヮーサーや畑の農作物、ニワトリの卵を収穫したり、山羊にごはんをあげたり、田舎暮らしを体験。澤岻さんが小さい頃に遊んだという秘密の滝にも案内していただきます。
翁長さんもヤギのごはんやりに挑戦
「私たちの生まれ育った地域では見ることのなかった自然の景色、経験できなかった暮らしが存在していて、一つ一つの体験が新鮮でワクワクします」と、「ホット総研」の上原さん、翁長さん。
「わんさか大浦パーク」の大城さん
澤岻さんのツアーに同行する「わんさか大浦パーク」の大城さんも、「皆さん一人一人が地域の宝物なんだよってことをアピールしたい。もっともっと素敵な人たちを紹介して、地域の魅力を伝えていきたいです」と語ってくれました。
三原区の自然の中で琉球藍の染め体験
三原区のローカルパートナーは、藍染工房「Ryukyuindigo namiai」を営む照屋詩苑さん。琉球藍を自身の畑で無農薬で育て、染料づくりから染色まで手がけています。
照屋さんの畑で琉球藍に触れる体験
大学生の頃、京都から移住した照屋さんは、沖縄の中でも豊かな自然が残る東海岸が好きで、この久志地域で暮らすように。念願だった琉球藍の畑を持ち栽培を始めた頃、実はここがかつて県内屈指の琉球藍原生地だったことを後から知り、運命を感じたと言います。
藍染工房「Ryukyuindigo namiai」を営む照屋詩苑さん
ツアーでは、広大な山の景色を望む琉球藍の畑で、実際に藍を触ったり、香りを楽しんだり。その後は、工房に移動して、藍染めのワークショップを行います。
藍染めのワークショップの様子
藍染め液を洗い流す場所は、なんと工房の裏にある川。緑豊かな木々に囲まれた川辺で、水のせせらぎや鳥のさえずりを聞きながら、自分だけの作品を作りあげる喜び。自然の恵みを肌で感じながらものづくりを行う、かけがえのない体験です。
みんなで川に入って藍染め液を洗い流す
「この体験を機に、リゾート地の西海岸とはまた違う、東海岸ならではの魅力を知ってもらえたら。久志には、山があって川があって海がある。自然はすべてがつながっているってことを感じてもらえたら嬉しいです」(照屋さん)
安部区でおしゃべりオジーと集落さんぽ
安部(あぶ)区のローカルパートナーは、“安部のジョーカー”という異名を持つ、ジョークが大好きな宮城勇吉さん。ふだんは畑作業に勤しみながら、地域行事ではホラ貝吹きや伝統芸能の大役をつとめる、安部集落の伝統をつなぐ存在です。
安部区のローカルパートナー宮城勇吉さん
宮城さんの体験プランでは、まず集落の中心地にある公民館で、豊年祭で祀る神様「ウニフガナシ」を始め、この地に残る伝統行事や沖縄の祈りの文化などについてお話を聞きます。その後、神秘的ながじゅまるの巨木や、神様を祀る根神屋(ニガミヤ)など、集落を散策。
地域に残る伝統文化について学べる貴重な時間
安部ビーチでは、豊年祭の際に鳴らすという宮城さんのホラ貝の演奏を聞き、ツアー参加者もホラ貝吹きに挑戦します。このツアーの最大の魅力は、なんといっても、これぞ沖縄のオジーといった宮城さんの愉快なゆんたく。みんなで笑って元気をいただきましょう。
ホラ貝を吹いて聞かせてくれた宮城さん
「“めんそーれー”、“イチャリバチョーデー(一度会えば皆兄弟)”は沖縄が誇るとっても良い言葉。その心を大切にして、皆さんをお迎えしたい」と宮城さん。
若い世代の翁長さん、上原さんにとっても「久志に来ると、家族以外の違うコミュニテイの方々とお話できる。それが毎回とっても楽しい」と、刺激になっている様子。
「宮城さんのお話はいつも楽しい」と「ホット総研」の上原さん、翁長さん
「『沖縄郷時間』はその名の通り、沖縄のおじいちゃんおばあちゃん、お兄さんお姉さんに会いに行くという感覚で、第二のふるさとを味わえるような体験内容になっていると思います。久志の皆さんの日常に触れることで、参加者の方が“またここに帰って来たい”と思える場所になってくれたら嬉しいですね」
「沖縄郷時間」
公式サイト/https://okisatojikan.com/
【問い合わせ】
株式会社ホット沖縄総合研究所
メール:info@hot-okinawa-ri.jp
沖縄CLIP編集部
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