おいしい塩を追いかけて《浜比嘉島の塩工房 (株)高江洲製塩所》

おいしい塩を追いかけて《浜比嘉島の塩工房 (株)高江洲製塩所》

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歴史文化

放送日:2025.04.28 ~2025.05.02

初回投稿日:2025.05.07
 最終更新日:2025.05.07

最終更新日:2025.05.07

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黒潮の影響を受ける美しい浜比嘉島の海
潮の影響を受ける美しい浜比嘉島の海

 

うるま市にある浜比嘉島の比嘉地区の海岸沿いに、海水と自然の力を生かした「浜比嘉島の塩工房 (株)高江洲製塩所」があります。

代表を務めるのは、塩職人の高江洲優さん。元々この地では、県外資本の製塩所が再生塩(海外から輸入した天日塩を日本の海水で溶かし、濃縮した海水を炊き上げて結晶化した塩)を作っており、高江洲さんは社員として働いていました。

しかし、その会社が沖縄から撤退することとなり、高江洲さんが工場を引き継いで、新しい塩工場を立ち上げることにしました。

塩職人の高江洲優さん
塩職人の高江洲優さん

自然の力を借りたおいしい塩づくり

100%の海水から、塩分濃度が高くておいしい塩を作りたいと考えた高江洲さんは、日本全国の塩づくりの現場を研究し、兵庫県や四国の瀬戸内沿岸で行われていた「流下式塩田」という伝統製法にたどり着きました。

「私が流下式塩田にこだわるのは、この場所が浜比嘉島だったからです。周りに民家がなく、生活排水や農薬の心配もない、さらに黒潮の影響で常に清浄な海水が流れ込む浜比嘉島の海は、塩づくりにとって最高の環境ですよ。

流下式塩田は、シンプルですが、時間と手間がかかるため、大規模な生産には向いていませんが、自然の力で海水を濃縮することによって、ミネラル成分も濃くなり、体に良いものになると思います。今では全国的にみても、流下式塩田を導入しているところは少ないかもしれませんね」と高江洲さん。

流下式塩田では、まず、ポンプの力で海水を汲み上げます
流下式塩田では、まず、ポンプの力で海水を汲み上げます

汲み上げた海水は、重ね合わせた竹の樋から竹枝を伝って落ちていきます
汲み上げた海水は、重ね合わせた竹の樋(とい)から竹枝(水滴を分散させ、水分を蒸発しやすくする役割)を伝って落ちていきます

竹枝から落ちる工程で、風が水分を飛ばし、塩分濃度を高くします

竹枝から落ちる工程で、風が水分を飛ばし、塩分濃度を高くします


貯水槽にたまった海水を何度も循環させて、約4〜5倍の塩分濃度に高めます

貯水槽にたまった海水を何度も循環させて、約4〜5倍の塩分濃度に高めます。循環には1時間程度かかるので、雨が降りそうになったら、1時間前にはポンプを止めます。途中でスコールが入ったら、最初からやり直しです


工場の釜で濃度の高い海水を炊き上げます
工場の釜で濃度の高い海水を炊き上げます

炊き上げた塩は2〜3日かけて乾燥させます
炊き上げた塩は2〜3日かけて乾燥させます

ポタポタと落ちるにがりを適度に取り除き、味とミネラルバランスを整えます
ポタポタと落ちるにがりを適度に取り除き、味とミネラルバランスを整えます

シンプルな工程だから手間暇を惜しまない

塩分濃度を約4〜5倍に高めた海水を、工場で炊き上げます。

湿度が高い夏は2〜3日間はかかるそう。クーラーのない工場での過酷な作業です。

冬は空気が乾燥しているので1日ほどで完成しますが、塩づくりの全工程には一週間ほどを要します。

「炊き上げた後に、にがりがポタポタと落ちます。にがりは塩を結晶化させた後に残る液体で、主成分はマグネシウムですが、その中にカリウムやカルシウムなどのミネラルが含まれています。

塩は、にがりの苦みをほどよく残すことがおいしさの秘訣です。苦みを切りすぎると、ナトリウムの塩辛さだけになり、逆に残しすぎると、苦みが強くなるので、そのバランスを取ることが大切なのです」と高江洲さんは話します。

塩をもっと身近に感じてもらうために

流下式塩田の見学は無料で、塩づくり体験も行っています。

塩づくり体験では、濃縮した海水の濃度を測り、熱を加えてかき回しながら塩を結晶化させる過程を体験します。

「見学だけでは、本物の塩がどうやってできるのかはわからないですからね。かき回す人が変わると味も変わるんですよ。10人いたら10通りの味に仕上がります。やっぱり自分が作った塩が一番おいしいですよ」と高江洲さん。

見学では、高江洲さんが丁寧に塩づくりを説明します
見学では、高江洲さんが丁寧に塩づくりを説明します。サービス精神旺盛な高江洲さんは、「知ってマース(沖縄方言で塩)か?」など、塩(しお・シオ)のダジャレでお客さんを笑わせます

塩をかき混ぜる工程
大きくゆっくりかき混ぜる人、早くかき混ぜる人、作る人の個性で、一人ひとり違う味になるそうです

2024年の5月に直売所をオープンし、塩はもちろん、にがりや塩を使った加工品などの販売も開始しました。

また、浜比嘉島の塩を使った塩おむすびや塩ぜんざいなどの軽食もイートインできます。

最近では塩を使った化粧品も開発し、今後は塩洗顔、塩石鹸なども販売予定です。

直売所を担当するのは奥様の高江洲美幸さん。

「浜比嘉島の塩のおいしさをシンプルに味わってほしいと思って、おむすびを提供しています。ご飯を炊く時にお塩を入れるんですが、ご飯全体に塩味が広がります」

浜比嘉の塩で作る塩おむすび
浜比嘉の塩おむすびは、最後まで塩のおいしさを味わえます

浜比嘉島の塩おむすびと、塩を使ったもずくスープ
浜比嘉島の塩おむすびと、塩を使ったもずくスープ、塩味が絶妙なきゅうりの浅漬け

これからの塩づくりとは?

「塩は、私たちの食生活に欠かせないものです。しかし、普段はあまり意識されることがない存在でもあります。私は塩づくりを通じて、自然の恵みと人の手が加わることで生まれるものの大切さを伝えたいと思っています。

また、沖縄の自然環境を活かした持続可能なものづくりも、多くの人に知ってもらえたらうれしいです。

実は海水を濃縮して煮詰める塩づくりは日本独特の文化なんです。この先、海外にこの技術を持っていけたら楽しいなと思いますね。

でもね、なんといっても、お客さんがおいしいって言ってくるのが一番! 喜びもひとしお(塩)です!」

と、高江洲さんが得意のダジャレで答えてくれました。

浜比嘉島の塩工場 (株)高江洲製塩所

住所 /
沖縄県うるま市勝連比嘉1597
TEL /
098-977-8667
Webサイト /
https://www.hamahigasalt.com/

沖縄CLIP編集部

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放送日:2025.04.28 ~ 2025.05.02

  • 放送日:2025.04.28

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