農家と歩むレストラン「旬家ばんちゃん」(石垣島)

農家と歩むレストラン「旬家ばんちゃん」(石垣島)

Reading Material

食べる

初回投稿日:2023.01.07
 最終更新日:2024.05.23

最終更新日:2024.05.23

農家と歩むレストラン「旬家ばんちゃん」(石垣島) クリップする

しまんちゅ旅はじめました

旬を味わう定食

「旬家ばんちゃん」は、石垣島(いしがきじま)白保(しらほ)集落内に佇む一軒家を改装したレストランです。お店は海岸沿いにあり、庭先から緑の防風林を抜けると目の前には白保の青い海が広がっています。



木漏れ日が踊る緑のトンネルを抜けると、

白保の海

世界でも最大級のアオサンゴ群集が生息する白保の海が広がります。

朝から充実した定食が食べられるお店として、地元の人からも観光客からも愛され人気を集めています。

旬家ばんちゃんの定食は、メインのおかずを「だし巻き卵」、「島魚のマース煮」、「軟骨ソーキのオイスターソース煮込み」の3品から2品を選ぶスタイルになっています。

お膳には石垣島の農家さんが作る旬の食材をふんだんに使った料理が並び、デザートまでセットになっています。

「島魚のマース煮」と「軟骨ソーキのオイスターソース煮込み」の定食

「島魚のマース煮」と「軟骨ソーキのオイスターソース煮込み」の定食

中でも大人気の「だし巻き卵」は、八重山育成園が大切に育てている平飼い鶏の卵を贅沢に2個半から3個使用し、一つひとつ丁寧に時間をかけて作っています。

だし巻き卵
ふあふあのだし巻き卵(旬家ばんちゃん提供写真)

「ゲダイズ(下大豆)」プロジェクト

 

旬家ばんちゃんのオーナーである坂東秀祐(ひですけ)、公美(くみ)夫妻は、料理を作り提供するだけではなく、地元の農家さんが栽培したゲダイズを商品化するという新たな挑戦にも踏み出しています。

旬家ばんちゃんのオーナーである坂東秀祐(ひですけ)、公美(くみ)夫妻

ゲダイズ(下大豆)とは沖縄在来種の大豆で、今ではほとんど姿を消してしまっていますが、かつて琉球王朝時代には多く栽培されていた品種です。

18世紀の「八重山嶋農務帳」にも記録があり、沖縄の気候にあっているので栽培しやすく、農薬や化学肥料などにも頼らずに生育が望める、可能性に満ちた植物です。

ゲダイズ(下大豆)

石垣市赤土流出防止協議会は、今では稀少なゲダイズを、宮古島でサトウキビ栽培の緑肥に利用されている方がいることを知り、2020年に石垣島でも栽培できるようにとゲダイズの種を分けてもらうことに。

その種を使って、さっそく赤土流出防止のために、またサトウキビ栽培の肥料とするために、石垣島の農家さんにより試験栽培が行われました。(石垣島では、近年畑の赤土が海へと流出し貴重な珊瑚礁へダメージを与えていることが問題視されているため、グリーンベルトの設置などの対策を講じています)

「ゲダイズを植えることで、海への赤土流出防止になり、葉っぱや茎は肥料として土に漉き込んで、収穫した実は美味しく食べられるということになれば、一石三鳥! 素晴らしい可能性を秘めている大豆なのです」と声を弾ませながら話す公美さん。

商品開発

 

2021年、坂東夫妻は、石垣島の宮良牧中地区の高台にある自然菜園 土楽(どうらく)で野菜やフルーツを育てている下地宏之(しもじ ひろゆき)さんからゲダイズを渡され、「少しだけど収穫できたので、これを美味しいものに変身させてくれませんか」と声をかけられました。

ゲダイズは粒が小さく、いろんな色が混ざっています。

坂東さんは、これで作った昔の味噌は美味しかったという話を聞き、味噌を仕込んでみました。

味見に、茹でただけのゲダイズをサラダのトッピングにしてみたところ、そのとても味わい深い風味に驚いたそうです。

ゲダイズ(下大豆)
(旬家ばんちゃん写真提供)

「黒紫米に似ているような、小豆にも似ているような趣ある味がするのです。これはそのまま茹で大豆としてでも十分商品価値はありそうだと思いました」(坂東夫妻)

現在坂東夫妻は、試行錯誤を繰り返しながら石垣島の農家さんが栽培するゲダイズを使った商品開発に取り組んでいます。

下地さんの畑

 

シェフの秀祐さんに、ゲダイズを自然栽培している下地さんの畑へと連れて行ってもらいました。

高台にある畑は、眺めがよく、気持ちのいい風が通り抜ける素晴らしいロケーションです。

ゲダイズ(下大豆)畑

ピーチパインの畝のあいだにゲダイズが植えられていました。

「マメ科の植物は、野菜の生育に欠かせない窒素を空気中からバランスよく取り込んでくれるので、土に力がつく。他の作物と交互に植え付けることで効果を期待しています」(下地さん)

ゲダイズの苗には、たくさんの豆が実っていました。

ゲダイズ(下大豆)

「料理を作る人の役割と僕たち作物を作る人の役割が結びついて、新しい『作る』という形が生まれれば、その方が長く続けていけると思うんです。

『作る』ことが持続可能になる」と話す下地さん。今後は、ゲダイズを植える農家さんを増やしていきたいそうです。

下地宏之さんと坂東さん

協力し合いながら共存していく

 

坂東夫妻と下地さんのように違う分野の人々が協力し合い、新たな発見や可能性を見出すことで、単独ではなし得ることができなかったであろうことも可能に。

ゲダイズ(下大豆)畑での下地さんと坂東さん

協力し合いながら共存するあり方は、昔から八重山に伝わる文化の一つ。形を変えながらも、この土地ならではの助け合いの心を未来につなげています。

旬家ばんちゃんプロデュースのゲダイズ商品が店頭に並ぶ日を心待ちにしながら、自然にも人にもやさしい「ゲダイズプロジェクト」を応援します。
 

旬家ばんちゃん

住所 /
沖縄県石垣市白保13-1
電話番号 /
0980-87-0813
営業時間 /
8:30~15:00(ラストオーダー13:30)
定休 /
毎週水曜木曜
HP /
https://www.shun-ya-banchan.com/

水野 暁子

同じカテゴリーの記事

しまんちゅ旅はじめました